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リマの聖ローサ (Santa Rose de Lima) 1684-85年頃
240×160cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
17世紀スペインにおいて一大画派であったマドリッド派の巨匠コエーリョの傑作『リマの聖ローサ』。新大陸最初の聖女でペルーのリマ出身である聖ドミニコ会第三会女≪ローサ≫の単身像として描かれる本作は、本作と同じくプラド美術館に所蔵される『グズマンの聖ドミニクス』の対を成す作品としてマドリッドのロサリオ修道院のために制作された。『グズマンの聖ドミニクス』同様、修道院の壁龕内へ彫られたかのような彫刻的な建築性を感じさせる表現が用いられる本作には、天使によって冠される茨の冠(薔薇の冠)や苦行と清浄の象徴とされる黒外套と白衣から成る聖ドミニコ会服、右手の薔薇の束、画面下部の天使が手にする書物中に記される「我が心のローサ、汝は我の許婚、主よ、私はあなたのはした女」の文言など、この聖女を示すアトリビュートが明確に示されている。マドリッドのロサリオ修道院のために制作された後、サルバティエラ伯ホセ・フランシスコ・サルミエントが旧蔵し、ラ・トリニダート美術館を経由してプラド美術館に入った本作に描かれる聖女聖ローサは1586年から1617年の間に活躍した新大陸最初の聖女であり、本作が制作される数年前に教皇クレメンスX世によって推挙され聖列されるが、その際、人々が新大陸出身の人間の聖性は天から薔薇が振ってきても信じられないと言うと、聖列が認められるまで聖都ヴァティカンに天上から薔薇が降り続いたとの逸話が残されている。
関連:対画『グズマンの聖ドミニクス』
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