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アイネイアスの前に現れるヴィーナス
(Venere appare Enea)1630-1635年頃
120×174cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
17世紀イタリア・バロックの大画家ピエトロ・ダ・コルトーナを代表する神話画のひとつ『アイネイアスの前に現れるヴィーナス』。同時代の画家ロマネッリとの協作と推測される本作に描かれるのは、美の女神ヴィーナスとトロイア王族の一人アンキセスとの間に生まれた勇士アイネイアスが戦を控えているところに、母ヴィーナスが火と鍛冶の神ウルカヌス(ヴィーナスの夫でもある)が鍛えた武具(本作では弓)を与える場面≪アイネイアスの前に現れるヴィーナス≫で、安定と秩序を重んじる古典主義的な場面構成の中に、ピエトロ・ダ・コルトーナ独特の優雅で豊穣な表現と、鮮やかで明瞭な色彩による描写が用いられていることが大きな特徴である。本場面で突然の母ヴィーナスの来訪に驚き、身を仰け反らせる勇士アイネイアスや、火と鍛冶の神ウルカヌスが鍛えた武具を息子に与えようとする美の女神ヴィーナスは古典的表現を用いながらも、劇的な感情表現や甘美性を感じさせる人体表現など画家のバロック様式における特徴を見事に示しており、ロマネッリとの協作とされる本作であれ、盛期バロックに決定的な影響を与えたピエトロ・ダ・コルトーナの優れた才能が如何なく発揮されている。
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