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養老院の女理事たち
(The Regentesses of the Old Men's Alms House) 1664年頃
170.5×249.5cm | 油彩・画布 | フランス・ハルス美術館 |
17世紀のオランダ絵画黄金期を代表する画家フランス・ハルスが晩年期に描いた最も有名な傑作『養老院の女理事たち』。本作はハールレムの養老院を運営する男性理事と女性理事たちの対をなす集団肖像画として制作された作品で、左から会計士、理事長補佐、理事長、秘書、そして養老院の寮母と人物が配置されている。さまざま色を混ぜ作り出された十数種類の黒色を使用したモノクローム的な色彩描写や、画面内を闊達に動くフランス・ハルス独特のタッチなども注目すべき点であるが、本作において最も特筆すべき点は、画家の類稀な洞察眼と表現力による女理事たちの情感的描写にある。海洋貿易都市であったハールレムの中でも富裕層である、この裕福な理事たちの内面を追求し荘厳的にも捉えることのできる深みに満ちた人物描写は、当時よく描かれた流行的な集団肖像画としての枠を超え、フランス・ハルスが辿り着いた絵画表現の集大成として非常に高度な完成度を見せている。
関連:対画『養老院の理事たち』
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