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エジプトから帰還する聖家族 1615-16年頃
(The Return of the Holy Family from Egypt)
75×55cm | 油彩・画布 | ロードアイランドデザイン学校 |
17世紀フランドル絵画の巨匠ヤーコブ・ヨルダーンス最初期の様式がよく示される代表的な作例のひとつ『エジプトから帰還する聖家族』。本作に描かれるのは、新約聖書マタイによる福音書のみに記される、降誕したイエスの殺害を命じたユダヤの王ヘデロから逃れる為にエジプトへ逃避していたイエス、聖母マリア、聖ヨセフであったが、ヘデロが死去すると聖ヨセフの夢に天使が現れイスラエルの地へ戻るよう告げられ同地へと帰還する場面≪エジプトから帰還する聖家族≫であるが、17世紀においてこの主題が取り上げられることは非常に珍しい。本作のダイナミックな運動性と質量感に溢れた人物表現は師ルーベンスの多大な影響を示しているも、明瞭で鮮やかな色調と世俗性を感じさせる登場人物の表情、一行に寄り添う犬、聖ヨセフの手にする大工道具、場面構成などに、後にヨルダーンス様式の大きな特徴となる表現が感じられる。なお本場面≪エジプトから帰還する聖家族≫では帰還した後、父ヘデロの跡を継いだアルケオラがイスラエルの地を支配していたことから、一行は再び天使の聖告に導かれガラリア地方のナザレに住居を構えたとされる。
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