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ピーテル・パウル・ルーベンス (Rubens,Peter Paul)
2006/04/03掲載
【全体図】
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戦争の惨禍
(The Horrors of Wars) 1637-1638年
206×345cm | 油彩・画布 | ピッティ美術館(フィレンツェ)
ルーベンスが手がけた政治的寓意画の最高傑作のひとつ『戦争の惨禍』。当時のトスカーナ大公フェルディナンド・ディ・メディチのために、大公の宮廷画家ユストゥス・シュステルマンスの依頼によって制作された本作は、約10年近く前に描いた画家の代表作『
戦争と平和
』と同様、三十年戦争などに代表される欧州の国際情勢の悪化に基づいた主題を描いた作品で、
ヤヌスの神殿
の開いた扉(古代ローマではこの扉が閉じられているときは平和とされていた)から出てきた軍神マルスが恋人であるウェヌス(ヴィーナス)の制止を振り切り、調和や愛、文化、学問、芸術などを蹂躙しながら復讐の女神アレクトや戦争によって引き起こされる疫病や飢饉の怪物に導かれ邁進してゆく姿を描いたもので、ルーベンスが政治的な声明を込めた最後となる作品である。本作において争いや破壊の象徴となる軍神マルスは、愛と美の女神ウェヌスやクピドの抱擁と愛撫を振り切り剣と盾を振りかざしている。ここで戦いの女神ミネルバではなく愛と美の女神ウェヌスが描かれ、その愛は争いの前で残酷なほどに無力に表現されている。また軍神マルスやマルスを導く復讐の女神アレクトの足下では、我が子を抱いた母による慈愛や多産の寓意や、背を向け壊れたリュートを手にする調和の象徴、書物や素描、一致の象徴である束ねられた矢などが無残にも踏み躙られている。また画面左部分に配されるベールを裂かれ宝飾具を一切身に着けない黒衣の女性は度重なる略奪や争いに見舞われた悲惨な欧州の寓意的表現であり、そのアトリビュートとして隣の天使(又は精霊)がキリスト世界を象徴する十字架と組み合わされた地球儀を手にしている。なお依頼主であるシュステルマンスへ送った画家自身の手紙による本作の解説が現在も残っており、本作の各象徴を読み解く文献として特に重要視されている。
関連:
ルーベンスによる油彩下絵『ヤヌスの神殿』
【制止するウェヌスと振り切るマルス】
抱擁と愛撫によって制止する愛と美の女神ウェヌスと、それを振り切る争いや破壊の象徴となる軍神マルス。本作において争いや破壊の象徴となる軍神マルスは、愛と美の女神ウェヌスやクピドの抱擁と愛撫を振り切り剣と盾を振りかざしている。ここで戦いの女神ミネルバではなく愛と美の女神ウェヌスが描かれ、その愛は争いの前で残酷なほどに無力に表現されている。
【軍神マルスを導く復讐の女神アレクト】
軍神マルスを導く復讐の女神アレクト。大公の宮廷画家ユストゥス・シュステルマンスの依頼によって制作された本作は、三十年戦争などに代表される欧州の国際情勢の悪化に基づいた主題を描いた作品で、またアレクトの後部には戦争によって引き起こされる疫病や飢饉の怪物が描かれている。
【壊れたリュートを手にする調和の象徴】
背を向け壊れたリュートを手にする調和の象徴。軍神マルスやマルスを導く復讐の女神アレクトの足下では、我が子を抱いた母による慈愛や多産の寓意や、背を向け壊れたリュートを手にする調和の象徴、書物や素描、一致の象徴である束ねられた矢などが無残にも踏み躙られている。
【蹂躙される書物や素描】
蹂躙される書物や素描、一致の象徴である束ねられた矢。依頼主であるシュステルマンスへ送った画家自身の手紙による本作の解説が現在も残っており、本作の各象徴を読み解く文献として特に重要視されている。
【宝飾具を一切身に着けない黒衣の欧州】
ベールを裂かれ宝飾具を一切身に着けない黒衣の欧州。そのアトリビュートとして隣の天使(又は精霊)がキリスト世界を象徴する十字架と組み合わされた地球儀を手にしている。また本作はルーベンスが政治的な声明を込めた最後となる作品である。
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