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トビトの治癒 (The Healing of Tobit) 1635年頃
158×223.5cm | 油彩・画布 | エルミタージュ美術館 |
17世紀ジェノヴァ派を代表する画家ベルナルド・ストロッツィの代表作『トビトの治癒』。本作に描かれる主題は、裕福で信仰の厚かったトビトの目に燕の糞が入り盲目となるも、メディア人カバエルへ貸した金の返金を求め使いに出していた息子トビアが、案内人に扮した大天使ラファエロと出会い捕った魚の心臓で旅の途中、悪魔払いをおこない、返金が済み持ち帰った魚の胆汁でトビト失明が癒やすという旧約聖書に記される逸話≪トビトの治癒≫である。本作では盲目となったトビトの目に息子トビアが胆汁を塗り込み、傍らで大天使ラファエルや妻アンナらが見守るという主題に准じた場面展開がおこなわれるも、カラヴァッジェスキ派の劇的な明暗法や、微妙な中間色を多用しおおらかで調和を感じさせる色彩など画家独自の様式がよく示されている。また画面下右部の魚には、観る者へ恐怖心さえ抱かせるかのような表現が用いられている点など、本作の場面描写においてベルナルド・ストロッツィが優雅で柔らかな対象表現以外の表現を示していることは注目に値する。
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