Description of a work (作品の解説)
2008/05/30掲載
Work figure (作品図)
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水浴の男(両手を腰に当てて立つ男)


(Le grand baigmeur) 1885-1887年
127×96.8cm | 油彩・画布 | ニューヨーク近代美術館

近代絵画の父ポール・セザンヌを代表する単身人物像のひとつ『水浴の男(両手を腰に当てて立つ男)』。画家の代表作が多数生まれた1880年代の中頃から制作が開始された本作に描かれるのは、水浴をおこなうひとりの男性の姿で、セザンヌは≪水浴≫する人々を画題とした作品を、単身・複数人問わず数多く手がけているが、本作はその中でも男性裸体像表現において伝統的展開を捨て、新たな展開を示したという点で、特に代表的な作例のひとつとして広く知られている。画面中央で腰布(肌着)のみを身に着け、腰に手を当てながら俯き加減に立つ男には、画家が他に手がけた水浴図とは異なり運動性が皆無である。そしてその姿態やプロポーションも、宗教画や神話画など、隆々とした逞しい肉体で描かれる伝統的な男性像ではなく、寸胴とした体躯や若干痩せた手足など現実味の高い男性像で描かれている。さらに本作に示される厳格な正面性によって観る者が受ける精神性や、俯く男の表情に見られる瞑想性は、現実的でありながらある種の隔たりを感じさせる本作の独特な雰囲気を決定付けている。また明確に描かれる水浴する男の輪郭線は、画題における主対象としての存在感を画面内で際立たせているほか、背景や男の身体上の皺として複数用いられる水平な線や、曲線と直線が絶妙に混在した外形としての形体表現も特筆に値する。色彩表現の点においても、平面的に表現される空間内で複雑に配される多様な色彩は観る者の目を奪うばかりである。このように伝統的表現を意識しながらも、革新的な斬新性を追い続けた画家が本作で示した、不合理的かつ不均衡ながら高い調和性は他に類のないほどの完成度を見せている。


【全体図】
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俯く男の表情に見られる深い瞑想性。本作に示される厳格な正面性によって観る者が受ける精神性や、俯く男の表情に見られる瞑想性は、現実的でありながらある種の隔たりを感じさせる本作の独特な雰囲気を決定付けている。



【俯く男の表情に見られる深い瞑想性】
寸胴とした体躯や若干痩せた手足など現実味の高い男性像。画面中央で腰布(肌着)のみを身に着け、腰に手を当てながら俯き加減に立つ男には、画家が他に手がけた水浴図とは異なり運動性が皆無である。



【現実味の高い男性像】
曲線と直線が絶妙に混在した輪郭線。伝統的表現を意識しながらも、革新的な斬新性を追い続けた画家が本作で示した、不合理的かつ不均衡ながら高い調和性は他に類のないほどの完成度を見せている。



【曲線と直線が絶妙に混在した輪郭線】

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