Description of a work (作品の解説)
2008/09/30掲載
Work figure (作品図)
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青い花瓶

 (Vase bleu) 1885-87年頃
61×50cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

近代絵画の父ポール・セザンヌ初期を代表する静物画作品のひとつ『青い花瓶』。1885-1887年頃に制作されたと考えられている(注:1890-91年頃とも推測されている)本作は、花が入れられた青い花瓶を中心に皿や林檎らしき果物などが構成される静物画である。画面中央やや左側に配される青く縦長の花瓶は強く濃く、何度も重ねられた輪郭線によって画面の中で圧倒的な質量感と形状的存在感を醸し出している。それは、本作に描かれる(諸説あるが、おそらくアイリスやシクラメン、ゼラニウムと思われる)花瓶に入れられた花や3つの果物も同様で、細部まで克明に描写されることなく、ただ静物のしての形態とその存在そのものが強調されている。本作で最も注目すべき点は、この静物が内包する形態の真実性に対する画家の探求と、それらが互恵的に関係し合う計算され尽した構成にある。互いの存在を消し合うことなく絶妙に配される各静物の距離感や、伝統的な写実性や遠近的表現を無視してでも取り組んだ、描く対象における形態の力動的な描写は特に秀逸な出来栄えを示しているほか、他の代表的な静物画作品に見られる複雑な構成とは一線を画する、簡素ながら絵画としての完成度が非常に高い静物の構成は、今なお観る者を感動させる。また色彩の表現においても背景の壁と視感覚溶け合うかのような花瓶の青い色彩や、それと対比する黄土色のテーブルや赤色の花と果実などは、画面の中で見事な調和を示している。さらに意図的に歪められた形態の描写にもセザンヌの独自的で革新的な絵画表現に対する信念が感じられ、これらの特徴はナビ派の画家たちを始め、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックなどキュビスムの画家たちや、アンリ・マティスに代表されるフォーヴィスム(野獣派)の画家たちに大きな影響を与えた。


【全体図】
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花瓶に入れられた花々。本作に描かれる(諸説あるが、おそらくアイリスやシクラメン、ゼラニウムと思われる)花瓶に入れられた花や3つの果物も同様で、細部まで克明に描写されることなく、ただ静物のしての形態とその存在そのものが強調されている。



【花瓶に入れられた花々】
圧倒的な存在感を醸し出す青い花瓶。互いの存在を消し合うことなく絶妙に配される各静物の距離感や、伝統的な写実性や遠近的表現を無視してでも取り組んだ、描く対象における形態の力動的な描写は特に秀逸な出来栄えを示している。



【圧倒的な存在感を醸し出す青い花瓶】
静物のしての形態とその存在そのものが強調される果物。色彩の表現においても背景の壁と視感覚溶け合うかのような花瓶の青い色彩や、それと対比する黄土色のテーブルや赤色の花と果実などは、画面の中で見事な調和を示している。



【存在そのものが強調される果物】

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