Description of a work (作品の解説)
2008/08/25掲載
Work figure (作品図)
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女とコーヒーポット(婦人とコーヒー沸かし)


(Femme à cafétière) 1890-1895年頃
130×97cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)

近代絵画の創始的存在ポール・セザンヌを代表する単身人物像のひとつ『女とコーヒーポット(婦人とコーヒー沸かし)』。本作は画家の父ルイ=オーギュスト・セザンヌがエクスのジャス・ド・ブッファンで購入し、画家自身も40年近く住んでいた館で働く家政婦(使用人)を描いた作品で、所謂≪労働者階級≫の人物を手がけた本作では1890年代以降のセザンヌの絵画的特徴が顕著に示されている。画面中央やや左に青色の清潔な衣服を着た家政婦が正面を向いて座っており、堅固に整えられた髪形が特徴的な家政婦の表情は労働者階級とは思えないほど威厳と真実味に満ちている。この労働者に対する称賛的かつ偶像的なアプローチはこの頃の画家の大きな特徴である。また家政婦の身体の中心には衣服の襞が垂直線となって明確に描かれており、背後の壁や画面右側に配されるコーヒーポット、カップに挿されるスプーンと共に本作の垂直性を強調している。そして家政婦の身体を構成する円錐形や、本作の名称ともなっているコーヒーポットやカップの円柱形による造形性は、セザンヌが友人エミール・ベルナールと交わしていた手紙の中で記した「自然を円柱、球、円錐によって扱い表現すべきである」という表現的信念が良く表れている。また本作の色彩表現に注目しても、基本的には力強さと質量に満ちた重厚な色彩が用いられるものの、家政婦の顔面に差す赤味を帯びた色彩と、画面左側の花柄模様に使用される白桃色の柔和性は、本作に人間的な柔らかさと普遍的な安心感を与えることに大きな役割を果している。


【全体図】
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威厳と真実味に満ちた家政婦の表情。堅固に整えられた髪形が特徴的な家政婦の表情は労働者階級とは思えないほど威厳と真実味に満ちており、この労働者に対する称賛的かつ偶像的なアプローチはこの頃の画家の大きな特徴である。



【威厳と真実味に満ちた家政婦の表情】
身体の中心に描かれる垂直の襞。家政婦の身体の中心には衣服の襞が垂直線となって明確に描かれており、背後の壁や画面右側に配されるコーヒーポット、カップに挿されるスプーンと共に本作の垂直性を強調している。



【身体の中心に描かれる垂直の襞】
コーヒーポットやカップの円柱形による造形性。この造形性にはセザンヌが友人エミール・ベルナールと交わしていた手紙の中で記した「自然を円柱、球、円錐によって扱い表現すべきである」という表現的信念が良く表れている。



【円柱形による造形性】

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