Description of a work (作品の解説)
2009/07/01掲載
Work figure (作品図)
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石膏のキューピッド像のある静物


(Nature morte avec l'amour en plâtre) 1895年頃
70×57cm | 油彩・板(紙) | コートールド・コレクション

近代絵画の父、ポール・セザンヌの典型的な静物画作品のひとつ『石膏のキューピッド像のある静物(キューピッドの石膏像)』。本作はセザンヌ自身が当時、所有していた≪石膏のキューピッド像≫を画題に制作された静物画で、画家の静物画としては珍しく縦長の画面に描かれている。画面中央に配される石膏のキューピッド像(かつてはピュジェ作の像の複製と考えられていたが、現在は帰属不明とされている)は、やや斜め上に視線を向けながら片足立ちしている。キューピッド像の姿態は全体的に丸みを帯び、ある種のロココ的な官能性を観る者に抱かせる。その背後には複数枚の画布(カンバス)が慎重に配されており、特に中央の石膏像の真後ろの画布(カンバス)の斜形は、後方へ体重をかけるキューピッドの姿態と呼応するように、そこから右斜め上と左斜め下に配される2枚の画中画的画布(カンバス)は本作の絵画的意味合いを強調する効果を生み出している。そして画面前景となるテーブルの上には林檎や玉葱、そして白い皿などが石膏像の周囲へ絶妙に配されている。やや高い位置から近接的に見下ろした視点で描かれる本作で最も注目すべき点は石膏像の流線的造形性と意図的に強調された垂直性、そして複雑に入り組んだ空間構成の絶妙な調和にある。本作を構成する個々の要素は一見すると無造作的に配されているが、ひとつひとつの造形的類似や重なり(例としては石膏像と背後の画布)、林檎や玉葱の描写などに示される連続性、大きく開けられた画面右側の空間など、かなり画家の計算と作為を見出すことができ、それらが画面の中で一体となることで類稀な絵画的調和が生み出されているのである。


【全体図】
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官能性に溢れたキューピッドの石膏像。画面中央に配される石膏のキューピッド像(かつてはピュジェ作の像の複製と考えられていたが、現在は帰属不明)は、やや斜め上に視線を向けながら片足立ちしている。キューピッド像の姿態は全体的に丸みを帯び、ある種のロココ的な官能性を観る者に抱かせる。



【官能性に溢れたキューピッド像】
皿の上に盛られる林檎。石膏像の背後には複数枚の画布が慎重に配されており、特に中央の石膏像の真後ろの画布の斜形は、後方へ体重をかけるキューピッドの姿態と呼応するように、そこから右斜め上と左斜め下に配される2枚の画中画的画布は本作の絵画的意味合いを強調する効果を生み出している。



【皿の上に盛られる林檎】
テーブル上に配される玉葱。本作を構成する個々の要素は一見すると無造作的に配されているが、ひとつひとつの造形的類似や重なり(例としては石膏像と背後の画布)、林檎や玉葱の描写などに示される連続性、大きく開けられた画面右側の空間など、かなり画家の計算と作為を見出すことができる。



【テーブル上に配される玉葱】

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