2009/07/01掲載
■
石膏のキューピッド像のある静物(Nature morte avec l'amour en plâtre) 1895年頃 70×57cm | 油彩・板(紙) | コートールド・コレクション 官能性に溢れたキューピッドの石膏像。画面中央に配される石膏のキューピッド像(かつてはピュジェ作の像の複製と考えられていたが、現在は帰属不明)は、やや斜め上に視線を向けながら片足立ちしている。キューピッド像の姿態は全体的に丸みを帯び、ある種のロココ的な官能性を観る者に抱かせる。
【官能性に溢れたキューピッド像】
皿の上に盛られる林檎。石膏像の背後には複数枚の画布が慎重に配されており、特に中央の石膏像の真後ろの画布の斜形は、後方へ体重をかけるキューピッドの姿態と呼応するように、そこから右斜め上と左斜め下に配される2枚の画中画的画布は本作の絵画的意味合いを強調する効果を生み出している。
【皿の上に盛られる林檎】
テーブル上に配される玉葱。本作を構成する個々の要素は一見すると無造作的に配されているが、ひとつひとつの造形的類似や重なり(例としては石膏像と背後の画布)、林檎や玉葱の描写などに示される連続性、大きく開けられた画面右側の空間など、かなり画家の計算と作為を見出すことができる。
【テーブル上に配される玉葱】 |