Description of a work (作品の解説)
2009/08/05掲載
Work figure (作品図)
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腕を組んだ農夫(部屋の中の男)


(Paysan debout, les bras croisés) 1893-95年頃
80×57.2cm | 油彩・画布 | バーンズ・コレクション

近代絵画の父ポール・セザンヌを代表する単身人物像のひとつ『腕を組んだ農夫(部屋の中の男)』。1893年から1895年頃に制作されたと考えられている本作は、セザンヌがこの頃、しばしば取り上げていた≪労働者(労働階級者)≫を画題とした作品の中のひとつで、特定のモデルを使用しているかは不明であるものの、無骨で素朴な農夫を単身として正面から捉えているのが大きな特徴である。画面中央には帽子を被り簡素な衣服を身に着けた農夫が腕を組んだ姿で画面上下の最大限を用いて配されている。ほぼ垂直立ちする農夫の組まれた腕や外側へ開かれる足先の堅牢性や安定性は、この農夫単身としての性格はもとより、労働者としての堂々とした姿をも表現している。さらにセザンヌの他の作品と比較しても際立つ厳格な正面性は、伝統的な(ルネサンス以前の)宗教画にも通じる深い精神性と普遍性を見出すことができる。また人物としての質量感に注目しても、縦長の人体構成にも関わらず、身に着けられる衣服の厚ぼったい生地や(特に上半身の)皺の撚った様子などによって塊然性が見事に表現されている。さらに本作の背景を構成する唯一の要素でもある画面左側の扉が画中の農夫と呼応する形で配されている。一方、本作の色彩表現においては比較的単純な配色構成ながら、細部の色調の変化は繊細かつ大胆な筆触によって表現豊かに描写されている点も特筆に値する。


【全体図】
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真正面から捉えられる農夫の姿。本作はセザンヌがこの頃、しばしば取り上げていた≪労働者(労働階級者)≫を画題とした作品の中のひとつで、特定のモデルを使用しているかは不明であるものの、無骨で素朴な農夫を単身として正面から捉えているのが大きな特徴である。



【真正面から捉えられる農夫の姿】
胸の前で組まれた腕の堅牢性。ほぼ垂直立ちする農夫の組まれた腕や外側へ開かれる足先の堅牢性や安定性は、この農夫単身としての性格はもとより、労働者としての堂々とした姿をも表現している。



【胸の前で組まれた腕の堅牢性】
垂直が強調される引き伸ばされた脚。セザンヌの他の作品と比較しても際立つ本作の厳格な正面性と造形性は、伝統的な(ルネサンス以前の)宗教画にも通じる深い精神性と普遍性を見出すことができる。



【垂直が強調される引き伸ばされた脚】

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