Description of a work (作品の解説)
2009/07/13掲載
Work figure (作品図)
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頭蓋骨を前にした青年


(Jeune homme à la tête de mort) 1896-98年
130.2×97.3cm | 油彩・画布 | バーンズ・コレクション

近代絵画の最大の巨匠ポール・セザンヌの注目すべき単身人物像のひとつ『頭蓋骨を前にした青年』。本作は書物や書簡、頭蓋骨が置かれるテーブルに肘を突きながら瞑想する青年の姿を描いた人物画作品で、モデルについては画家の息子とする説も唱えられているものの、一般的には画家の知人の農婦の息子とされている。セザンヌ自身「この絵を大変気に入っている。制作から離れても時折言及する数少ない作品のひとつだ。」と述べているよう、画家にとっても特別な作品である本作では、画面右側に木椅子に腰掛け、テーブルへ肘を突きながら想いに耽る端整な顔立ちの青年が配され、左側には知識や学識、思慮を象徴する書物や書簡と共に、伝統的な≪メメント・モリ(死を忘れるな)≫を意味する頭蓋骨が配されている。青年らの背後にはセザンヌが他の作品でもモチーフとして用いている花柄のカーテンが配されており、構成として纏め上げる効果を生み出している。本作で最も注目すべきは≪メメント・モリ(死を忘れるな)≫の古典的な教訓性を排した、死の象徴性そのものへの絵画的言及と、美術的絵画価値としての意図にある。頭蓋骨は古くからヴァニタス画(虚栄画)の主画題として用いられたモチーフで、本作にもセザンヌの過去の偉大な巨匠たちによるヴァニタス画への意識を見出すことができるが、老いた己が描き出す若き青年による死への夢想の姿や重々しい色彩など、そこには老いた画家自身の死に対する複雑な心境が色濃く反映されている。さらに1880年代後半以降の画家の作品の大きな特徴である強調された垂直性や、視覚的感覚や認知性を意識した構図、構成など絵画作品としての価値に対する意図が本作には込められている。


【全体図】
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頭蓋骨を前に瞑想する端整な顔立ちの青年。本作は書物や書簡、頭蓋骨が置かれるテーブルに肘を突きながら瞑想する青年の姿を描いた人物画作品で、モデルについては画家の息子とする説も唱えられているものの、一般的には画家の知人の農婦の息子とされている。



【頭蓋骨を前に瞑想する端整な青年】
≪メメント・モリ(死を忘れるな)≫を意味する頭蓋骨。頭蓋骨は古くからヴァニタス画(虚栄画)の主画題として用いられたモチーフであるが、老いた己が描き出す若き青年による死への夢想の姿や重々しい色彩など、そこには老いた画家自身の死に対する複雑な心境が色濃く反映されている。



【≪メメント・モリ≫を意味する頭蓋骨】
垂直性が強調されるテーブルの構成。1880年代後半以降の画家の作品の大きな特徴である強調された垂直性や、視覚的感覚や認知性を意識した構図、構成など絵画作品としての価値に対する意図が本作には込められている。



【垂直性が強調されるテーブルの構成】

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