2009/03/22掲載
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糸杉と星の見える道(夜の星空、荷車、通行人)(Route aux cyprès) 1890年 92×73cm | 油彩・画布 | クレラー=ミュラー国立美術館
天へと枝葉を伸ばす一本の糸杉。画面中央には大きく枝葉を揺らめかせるように天へと伸びる糸杉が一本、象徴的に配されており、その先端となる画面上部では、糸杉を境に右側へ明々と輝く三日月が、左側には煌々と闇夜を照らす星が描き込まれている。
【天へと枝葉を伸ばす一本の糸杉】 渦巻く光と闇の対比的表現。画家にとって糸杉は人間の生、すなわち誕生や成長、友愛、永遠への憧憬を意味していたと同時に、その終焉である≪死≫をも象徴する存在であり、精神的圧迫に苦悩していたゴッホには自身の内面世界を反映する為に最も的確なモチーフでもあった。
【渦巻く光と闇の対比的表現】 闇夜に煌々と輝く星。やや長い筆触による荒々しい大胆な形態描写と印象表現は本作の異様的な(ゴッホ自身の)心象世界を見事に表現しており、特に夜空に輝く星や三日月の渦巻くような筆致による光と闇の対比的描写にはゴッホの(画家としての)類稀な独創性が良く表れている。
【闇夜に煌々と輝く星】
農道を歩む2人の農夫の姿。サン・レミ滞在時期、通称サン・レミ時代に制作された本作の画面下部には2人の農夫と一台の荷馬車が配されており、画家の迷宮的な孤独からの脱却願望も見出すことができる。
【農道を歩む2人の農夫の姿】 |