Description of a work (作品の解説)
2008/11/27掲載
Work figure (作品図)
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馬鈴薯を食べる人たち(食卓についた5人の農民)


(Les mangeurs de pommes de terre (cinq paysans attablés)) 1885年
82×114cm | 油彩・画布 | ファン・ゴッホ美術館

後期印象派の孤高の巨匠フィンセント・ファン・ゴッホ初期の代表作『馬鈴薯を食べる人たち(食卓についた5人の農民)』。ゴッホが本格的に画家を志す決意を弟テオに示して数年経過した32歳の頃に制作された本作は、貧しい労働者階級の家族が、小さな慎ましいランプの光の中で夕食として馬鈴薯(じゃがいも)を食する情景を画題にした作品で、労働者への宗教画にも通じる聖性を含んだ賛美と深い共感が示されている。ゴッホは青年期に炭鉱地帯で伝導師(牧師)として就労するなど貧しい人々の生活の実態を目の当たりにしており、彼らの生活内に漂う独特の悲愴感・哀愁感や、それでも逞しく生きる労働者たちに強く共鳴していた。ゴッホは本作を制作した後に「僕はこの絵で何よりも、ランプの下で皿に盛られた馬鈴薯を食べる人々の手が、大地を耕していた手であることを明確に表現することに力を注いだ」とそれを示す言葉を残している。画面中央やや上に煌々と炎を灯し暗闇を照らす小さなランプが配され、その周りを囲むように労働者階級の人々が描き込まれている。画面左側の(おそらく夫婦であろう)若い男女は何か会話をしながら皿に盛られたジャガイモにフォークを挿しており、画面右側の少し年齢を重ねた老男女はカップにコーヒーのような飲み物を注いでいる。画面手前(最前景)には後姿の幼い女性(子供)が配され構造的に画面の左右を連結させている。強烈な陰影と光の描写によって登場人物や各構成要素は闇の中で浮かび上がるかのように表現されており、その姿や様子は風俗的な内容ながら聖画のような厳粛性を感じさせる。また太く明確な筆触によって描かれる対象の独特な質感表現は素朴的でありながら画家の主題に対する真摯な態度を見出すことができ、そのような点からも本作はゴッホの修行時代における総決算的な位置に付けられている。なおゴッホは≪馬鈴薯を食べる人たち≫を画題とした作品を(習作を含み)数多く手がけており、本作は第一作第二作に続いて第三作目(そして最終作)として制作された。

関連:『馬鈴薯を食べる人たち』第一作(最初の習作)
関連:『馬鈴薯を食べる人たち』第二作


【全体図】
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カップにコーヒーを注ぐ老婆。本作は、貧しい労働者階級の家族が、小さな慎ましいランプの光の中で夕食として馬鈴薯(じゃがいも)を食する情景を画題にした作品で、労働者への宗教画にも通じる聖性を含んだ賛美と深い共感が示されている。



【カップにコーヒーを注ぐ老婆】
食卓に上げられた馬鈴薯(じゃがいも)。ゴッホは本作を制作した後に「僕はこの絵で何よりも、ランプの下で皿に盛られた馬鈴薯を食べる人々の手が、大地を耕していた手であることを明確に表現することに力を注いだ」と言葉を残している。



【食卓に上げられた馬鈴薯(じゃがいも)】
強烈な明暗と光の描写。強烈な陰影と光の描写によって登場人物や各構成要素は闇の中で浮かび上がるかのように表現されており、その姿や様子は風俗的な内容ながら聖画のような厳粛性を感じさせる。



【強烈な明暗と光の描写】

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