Description of a work (作品の解説)
2009/06/21掲載
Work figure (作品図)
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種まく人(種をまく人、農夫)

 (Le semeur) 1888年
64×80.5cm | 油彩・画布 | クレラー=ミュラー国立美術館

後期印象派の画家フィンセント・ファン・ゴッホの色彩家としての才能が顕著に示される傑作『種まく人(種をまく人、農夫)』。本作は、強烈な陽光の輝きを求め訪れた南仏アルル滞在期(1888年2月-1889年5月)に制作された作品で、農民画家としてもよく知られている、19世紀フランス写実主義の巨匠ジャン=フランソワ・ミレーの代表作『種をまく人』に共鳴を覚え、同画題にて取り組んだ作品のひとつでもある。絵画を制作し始めた早い時期からゴッホはミレーが扱った画題≪種をまく人≫に強い固執と羨望の念を抱いており(ゴッホはミレーの『種をまく人』のエッチングを所有していたことが知られている)、画家自身、この頃書いた手紙の中で次のような言葉を残している。「種まく人を描くことは昔から僕の念願だった。古い願いはいつも成熟できるとは限らないけど、僕にはまだできることがある。ミレーが残した『種をまく人』には残念ながら色彩が無い。僕は大きな画面に色彩で種まく人を描こうかと思っている。」。このような言葉からも理解できるよう、1888年の秋頃に手がけられた本作で最も注目すべき点は過剰とも思えるほどの刺激的な色彩の表現にある。画面上部ほぼ中央には、強烈な光を放ちながら地平線へと沈みゆく太陽が配され、遠景の穂畑を黄金色に輝かせている。中景へは陽光の黄色と対比するかのような青色の凹凸の陰影が斑状に描き込まれる畑へ種を撒く農夫がミレーの『種をまく人』とほぼ同様の姿態で配されており、逆光に包まれたその姿には人間としての力強い生命力が感じられる。本作のあたかも外側へと弾けだしているような筆触による激しく鮮やかな陽光の神秘的な色彩や、画題≪種をまく人≫が象徴する人間の生への希望や生命の再生を現代的アプローチによって表現したゴッホの取り組みは20世紀前半の画家たちに大きな影響を与えたように、今なお色褪せることなく我々を惹きつける魅力に溢れている。

関連:別ヴァージョン 『種まく人(種をまく人、農夫)』
関連:ミレー作 『種をまく人(ボストン美術館版)』
関連:ミレー作 『種をまく人(山梨県立美術館版)』


【全体図】
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種まく人の力強い生命感。本作は、強烈な陽光の輝きを求め訪れた南仏アルル滞在期(1888年2月-1889年5月)に制作された作品で、農民画家としてもよく知られている、19世紀フランス写実主義の巨匠ジャン=フランソワ・ミレーの代表作『種をまく人』に共鳴を覚え、同画題にて取り組んだ作品のひとつでもある。



【種まく人の力強い生命感】
輝くような陽光の色彩。1888年の秋頃に手がけられた本作で最も注目すべき点は過剰なほどに刺激的な色彩の表現にあり、画面上部ほぼ中央には、強烈な光を放ちながら地平線へと沈みゆく太陽が配され、遠景の穂畑を黄金色に輝かせている。



【輝くような陽光の色彩】
明暗部分が入り交じる畑。本作のあたかも外側へと弾けだしているような筆触による激しく鮮やかな陽光の神秘的な色彩や、画題≪種をまく人≫が象徴する人間の生への希望や生命の再生を現代的アプローチによって表現したゴッホの取り組みは20世紀前半の画家たちに大きな影響を与えた。



【明暗部分が入り交じる畑】

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