2007/03/11掲載
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フォリー=ベルジェール劇場のバー(Le bar aux Folies-Bergère) 1881-1882年 96×130cm | 油彩・画布 | コートールド美術研究所(ロンドン)
観る者と対峙するフォリー=ベルジェール劇場の女給仕シュゾンの眼差し。画家が死の前年に完成させた、最後のサロン出典作でもある本作に描かれるのは、当時パリで最も華やかな社交場のひとつであったフォリー=ベルジェール劇場のバーと、シュゾンという女性をモデルにした給仕の姿である。
【観者と対峙する女給シュゾンの眼差し】
鏡に映る女給仕シュゾンの後姿と紳士。中央では給仕を真正面から捉え描き、右部の鏡に映る後姿は紳士と共に角度をつけて描かれている点などから、本作では現実ではありえない構図的・空間的矛盾が生じているものの、平面的でありながら空間を感じさせる絵画的な空間構成は見事の一言である。
【鏡に映る女給仕シュゾンの後姿と紳士】
大胆に筆跡を残す振動的な筆さばきや色彩。パリという都会の中で興じられる社会的娯楽を的確に捉え、そのまま切り取ったかのような本作では技法的にも、大胆に筆跡を残す振動的な筆さばきや色彩など特筆すべき点が多々存在する。
【大胆に筆跡を残す振動的な筆さばき】
オレンジが入るクリスタルのグラス。画家はこの頃(おそらく梅毒によって)左足が壊疽しかけており、激痛に耐えながらもフォリー=ベルジェール劇場に通い習作を描くも、痛みが増し、歩けないほどまでに悪化すると、アトリエに同劇場のバーのセットを組み、そこにモデルを立たせ本作を完成させた。
【オレンジが入るクリスタルのグラス】 |