Description of a work (作品の解説)
2008/11/23掲載
Work figure (作品図)
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ポール=コトンのピラミッド岩、荒海
(ソヴァージュ海岸、ポール=コトンの尖塔)


(Pyramides de Port-Coton, mar Sauvage) 1886年
65×81cm | 油彩・画布 | プーシキン美術館(モスクワ)

印象派の最も重要な画家クロード・モネ探求の時代の代表的な作例のひとつ『ポール=コトンのピラミッド岩、荒海(ソヴァージュ海岸、ポール=コトンの尖塔)』。本作は画家が印象主義的な表現に疑問と限界を抱き、新たな表現手法を模索していた1880年代に制作された作品で、ブルターニュ地方ベリール・アン・メールの海岸にある≪ピラミッド≫と呼ばれた尖塔岩が画題として描かれている。モネは1880年代半ばからフランス各地の沿岸に滞在し制作活動をおこなったことが知られており、ベリールには1886年の9月から11月まで滞在していた(この時、画家は40点近くの作品を制作した)。画面中央にピラミッドと呼ばれた尖塔岩が重厚的に描かれており、その周囲には高さの異なる先が鋭く尖った岩々が配されている。ベリール沿岸の荒々しい波が激しく岩を打ちつけ白い飛沫を上げている様子がよく伝わってくる本作の、どこか不吉で重々しい雰囲気は画家自身も十分に把握していたが、自分がこれまでに扱ってきた光り輝く画題とは全く異なるこの風景への取り組みそのものがモネを魅了していた(画商デュラン=リュエルへの手紙の中でそう述べられている)。特に本作に描かれる荒波の動きの捉え方やそこに反射する光の微妙な表現には、画家の自然に対する鋭い観察眼を見出すことができるほか、暗く沈みこむような風景の中に感じられる多様な色彩には画家の優れた色彩感覚が示されている。また研究者たちからはモネが所有していた浮世絵のコレクションの中の一枚(歌川広重の六十余州名所図会『薩摩 坊ノ浦 双剣石』)からの影響が指摘されている。なお本作に描かれるピラミッド(尖塔岩)を画題とした同一構図の作品がニ・カールスバーク美術館(コペンハーゲン)所蔵の『ベリール島の岩』を始め6点制作されている。

関連:歌川広重作 『六十余州名所図会(薩摩 坊ノ浦 双剣石)』
関連:ニ・カールスバーク美術館所蔵 『ベリール島の岩』


【全体図】
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ベリール海岸にある≪ピラミッド≫と呼ばれた尖塔岩。本作は画家が印象主義的な表現に疑問と限界を抱き、新たな表現手法を模索していた1880年代に制作された作品で、ブルターニュ地方ベリール・アン・メールの海岸にある≪ピラミッド≫と呼ばれた尖塔岩が画題として描かれている。



【≪ピラミッド≫と呼ばれた尖塔岩】
激しく岩を打ちつける荒波。本作に描かれる荒波の動きの捉え方やそこに反射する光の微妙な表現には、画家の自然に対する鋭い観察眼を見出すことができるほか、暗く沈みこむような風景の中に感じられる多様な色彩には画家の優れた色彩感覚が示されている。



【激しく岩を打ちつける荒波】
暗く沈みこむような重々しい風景。ベリール沿岸の荒々しい波が激しく岩を打ちつけ白い飛沫を上げている様子がよく伝わってくる本作の、どこか不吉で重々しい雰囲気は画家自身も十分に把握していたが、自分がこれまでに扱ってきた光り輝く画題とは全く異なるこの風景への取り組みそのものがモネを魅了していた。



【暗く沈みこむような重々しい風景】

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