Description of a work (作品の解説)
2008/07/31掲載
Work figure (作品図)
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カシスの港

 (Port de Cassis) 1884年頃
34.3×51cm | 油彩・板 | 国立西洋美術館(東京)

19世紀フランスの重要な画家アドルフ・モンティセリが晩年に手がけた代表作のひとつ『カシスの港』。本作に描かれるのは画家が1870年頃から定住した故郷マルセイユ近郊の小さな港町≪カシス(画家は最晩年期に同場所に滞在している)≫の情景である。画面前景にはモンティセリらしい重厚でありながら多彩な色彩による群草が配され、その中央には白色のドラム缶が描き込まれている。そしてその奥には港の入り江に沿った堤(岸壁)が描かれており、数名の人々が堤の上に揚げられた数隻の小船の整備・点検(手入れ)をおこなっている。多数の船(ヨット)が停泊している港の入り江の対岸には遠景として小船と同色の建物が並ぶカシスの街並みが配され、さらにその奥には小高い丘陵と空が描かれている。この頃、既に体調の悪化(モンティセリは翌1885年に下半身不随となった)の前兆を見せていたにもかかわらず、画家の眼を見張るほどの創造力と表現力が示される本作の中でも特に、荒々しく激情的な画家独特の力強い筆触は非常に優れた出来栄えを示しており、ある種の即物性すら感じさせる。また本画面(本情景)に漂う荒涼とした静寂性や詩情性も注目すべき点のひとつである。なおモンティセリは個人所蔵の『カシスの港』など本作とほぼ同時期に、同様の構図でヴァリアント的な作品を数点描いたことが知られている。

関連:個人所蔵 『カシスの港』


【全体図】
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堤の上に揚げられた数隻の小船。本作に描かれるのは画家が1870年頃から定住した故郷マルセイユ近郊の小さな港町≪カシス(モンティセリは最晩年期に同場所に滞在している)≫の情景で、荒々しく激情的な画家独特の力強い筆触は非常に優れた出来栄えを示している。



【堤の上に揚げられた数隻の小船】
入り江の中の海面の深い色彩。画家の眼を見張るほどの創造力と表現力が示される本作のある種の即物性すら感じさせる表現は特筆に値するものであるほか、本画面(本情景)に漂う荒涼とした静寂性や詩情性も注目すべき点のひとつである。



【入り江の中の海面の深い色彩】
小船と同色の建物が並ぶカシスの街並み。多数の船(ヨット)が停泊している港の入り江の対岸には遠景として小船と同色の建物が並ぶカシスの街並みが配され、さらにその奥には小高い丘陵と空が描かれている。



【小規模の建物が並ぶカシスの街並み】

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