Description of a work (作品の解説)
2007/05/27掲載
Work figure (作品図)
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曳船道(マルヌ河の岸辺、荷を運ぶ小道)


(Chemin de halage) 1864年
81.9×107cm | 油彩・画布 | グラスゴー美術館

印象派の巨匠カミーユ・ピサロ初期を代表する作品のひとつ『曳船道』。1860年代に制作された、現存する数少ない作品の中の1点である本作に描かれるのは、パリ近郊マルヌ河流域の曳船道(船引の道)を描いた作品で、『マルヌ河の岸辺』、又は『荷を運ぶ小道』とも呼ばれている。おそらく1864年のサロンに出品された作品か、又はそれに類似する作品と推測される本作では、ピサロが多大な影響を受け、自ら「弟子である」とも称したバルビゾン派を代表する風景画家ジャン=バティスト・カミーユ・コローの様式を如実に踏襲していることが示されている。画面中央では屈曲した小道の奥側から一人の農婦が、前景に向けて歩みを進めている。そしてその前景では、おそらく木々の間から射し込む陽光が輝きを帯びながら印象的な一筋の光の線を小道の上に映している。また画面左部分から右部分にかけての傾斜は、見る者の視線を自然にマルヌ河へと向けさせており、マルヌ河は緑々しい木々の色彩を反射しながら、静かにその流れを継続している。作品全体から醸し出される静謐ながら穏やかで健常的な風景描写も特筆に値する点のひとつであるが、画面左やや上部に配される巨木とそこに茂る葉などの擦れた描写に代表されるコロー的な抒情性を帯びる表現は、本作の中で最も注目すべき点である。また全体的に緑色系統で統一しながら、小道の赤褐色や陽光の白黄色、清々しい上空の薄青色などとの色彩の対比と調和は、本作の特に優れた点のひとつでもある。


【全体図】
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前景に向けて歩みを進めている農婦。1860年代に制作された、現存する数少ない作品の中の1点である本作に描かれるのは、パリ近郊マルヌ河流域の曳船道(船引の道)を描いた作品で、『マルヌ河の岸辺』、又は『荷を運ぶ小道』とも呼ばれている。



【前景に向けて歩みを進めている農婦】
印象的な一筋の光の線。おそらく1864年のサロンに出品された作品か、又はそれに類似する作品と推測される本作では、ピサロが多大な影響を受け、自ら「弟子である」とも称したバルビゾン派を代表する風景画家ジャン=バティスト・カミーユ・コローの様式を如実に踏襲していることが示されている。



【印象的な一筋の光の線】
コローを思わせる巨木に茂る葉の描写。マルヌ河は、緑々しい木々の色彩を反射しながら、静かにその流れを継続しているほか、画面左やや上部に配される巨木とそこに茂る葉などの擦れた描写に代表されるコロー的な抒情性を帯びる表現は、本作の中で最も注目すべき点である。



コローを思わせる巨木に茂る葉の描写】

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