Description of a work (作品の解説)
2008/01/27掲載
Work figure (作品図)
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詩人に霊感を与えるミューズ


(La muse inspirant le poete) 1909年
144×114cm | 油彩・画布 | バーゼル市立美術館

素朴派の画家アンリ・ルソー晩年を代表する肖像画作品のひとつ『詩人に霊感を与えるミューズ』。本作は美術評論家としても活躍していた詩人兼小説家ギヨーム・アポリネールと、その恋人ローランサンの肖像画である。この『詩人に霊感を与えるミューズ』という作品は2点あることが知られ、アンデパンダン展に出品された最初の作品(第1ヴァージョン)では、本来、画家が描こうとした詩人の花を象徴するカーネーションを、誤ってウォールフラワーとも呼ばれるアブラナ科エリシマム属の花であるチェイランサス(和名ニオイアラセイトウ)で描いてしまった為に、訂正作品として本作(第2ヴァージョン)が制作された(※第1ヴァージョンは現在モスクワのプーシキン美術館が所蔵)。本作を300フランで購入したアポリネールの証言や、画家との手紙のやり取りによると、本作を描く際、ルソーはモデルであるアポリネールやローランサンの鼻、口、耳、額、身体など全身を巻尺で正確に採寸し、それら測定値を元に画面の寸法(大きさ)を決めたとされている。画面中央では、太陽神アポロンに付き従う諸芸術を司る9人の女神ミューズ(ムーサ)の中から、喜びや叙事詩を司るとされているエウテルペ(又は恋愛詩を司るエラート)に扮したローランサンが、詩人(本作ではアポリネール)に霊感を与えるという、古典的主題に即した場面が展開されており、背景には画家の希望によってリュクサンブール公園の一角が描かれている。これら主題(人物)と背景の密接な関係性は、画家が自画像として制作した『風景の中の自画像(私自身、肖像=風景)』でも示された、風景(背景)と肖像の一体性に他ならない。また人物やカーネーション、木々など構成要素の描写でも、伝統的な写実的表現を大きく逸脱した、対象の真実性に迫る独自の表現が用いられており、観る者を画家独特の世界観へと惹き込む。


【全体図】
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美術評論家としても活躍していた詩人兼小説家ギヨーム・アポリネール。本作を300フランで購入したアポリネールの証言や、画家との手紙のやり取りによると、本作を描く際、ルソーはモデルであるアポリネールやローランサンの鼻、口、耳、額、身体など全身を巻尺で正確に採寸し、それら測定値を元に画面の寸法(大きさ)を決めたとされている。



【詩人兼小説家ギヨーム・アポリネール】
ミューズに扮したアポリネールの恋人ローランサン。『詩人に霊感を与えるミューズ』という作品は2点あることが知られ、アンデパンダン展に出品された最初の作品では、本来、画家が描こうとした詩人の花を象徴するカーネーションを、誤ってウォールフラワーとも呼ばれるチェイランサス(和名ニオイアラセイトウ)で描いてしまった為に、訂正作品として本作が制作された。



【ミューズに扮したローランサン】
描き直された詩人の花を象徴するカーネーション。古典的主題に即した場面展開の背景には画家の希望によってリュクサンブール公園の一角が描かれており、この主題(人物)と背景の密接な関係性は、画家が自画像として制作した『風景の中の自画像(私自身、肖像=風景)』でも示された、風景(背景)と肖像の一体性に他ならない。



【描き直されたカーネーション】

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