2011/05/16掲載
■
戴冠式の正装の皇帝ナポレオン(L'empereur Napoléon 1er en costume de sacre) 1805年頃 223×143cm | 油彩・画布 | ヴェルサイユ宮美術館 対画:ルーヴル美術館所蔵 『聖別式の衣装を身に着けたナポレオン1世』
古典的表現に倣うナポレオンの厳格な正面性。本作は、1804年にパリのノートル=ダム大聖堂でフランス皇帝に即位し絶頂期を迎えていた≪ナポレオン・ボナパルト≫が戴冠式の衣服を身に着ける全身肖像画で、ジェラールは王の肖像画家、又は肖像画家の王として名を馳せていた。
【厳格な正面性】
正式を重んじる豪奢な戴冠式の衣服。頭には栄光と勝利を意味する黄金の月桂樹の冠を被り、首からは自らが制定したレジオン・ドヌール勲章を下げ、全身には摂政のダイヤモンドで装飾された戴冠式用の剣を携えながら、赤色と白色と金色とが引き立て合う質と光沢感の高い豪奢な衣服を身に着け、エメラルドの指輪が薬指に嵌められた右手には王の杖が堂々と持たされている。
【豪奢な戴冠式の衣服】
「正義の手」が備わる杖と黄金色に輝く宝珠。厳格性を際立たせる真正面の顔と威風漂う立ち振る舞いは、皇帝としての正統性や歴史的な荘厳性を観る者へ強く感じさせることに成功しており、本作にはフランソワ・ジェラールの肖像画に対する優れた才能が発揮されている。
【正義の手と黄金色に輝く宝珠】 |