Description of a work (作品の解説)
2010/01/06掲載
Work figure (作品図)
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アンジェリカを救うルッジェーロ


(Roger délivrant Angélique) 1819年
147×190cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ)

新古典主義の巨匠ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングルが手がけた中世文学主題作品の代表作『アンジェリカを救うルッジェーロ』。1819年に開催されたサロン、そして1855年のパリ万国博覧会への出品作としても知られる本作は、15世紀後半から16世紀前半期(ルネサンス期)に活躍した、同時代のイタリアを代表する詩人ルドヴィーコ・アリオストの傑作叙事詩≪怒れるオルランド(狂えるオルランド)≫の一場面に典拠を得て制作された作品で、美しく又恋多きキタイ(※インド)の姫君アンジェリカが魔術師に騙され海賊に捕らわれた後、海の怪物の生贄として鎖で岸壁に繋がれるものの、彼女に激しい恋心を抱いていた主人公のひとり遊歴騎士ルッジェーロが上半身が鷲、下半身が馬という誇り高き伝説の生物ヒッポグリフに跨りながら怪物を退治し、アンジェリカを救い出すという場面が描かれている(※救い出した後、結局ルッジェーロはアンジェリカに失恋する)。画面左側に描かれる黄金の甲冑を身に着けた騎士ルッジェーロは、雄々しくいきり立つヒッポグリフの背に乗りながら長槍で画面右下の怪物と戦っている。怪物は。毒々しく赤い口を開き鋭い牙をルッジェーロへと向けつつ、刺された槍によってもがき苦しんでいる。そして画面中央よりやや右側に配される美しきアンジェリカは太い鎖で岩礁に繋がれながら己を助けんとするルッジェーロへと視線を送っている。本作に示される古代の彫刻のように理想化されたアンジェリカの美しく均整的な姿態や、主対象を重点的に照らす演劇的な光源処理、極めて写実的ながらどこか人工的な造形を感じさせる描写などには、新古典主義の典型的様式に基づきながら、他の追随を許さないアングル独自の個性を感じることができる。なお公開された当時、ルッジェーロをペルセウス=アンリ4世、アンジェリカをアンドロメダ=フランスと置き換え、フランスを解放するアンリ4世と王政支持思想の解釈が指摘されたが、主題表現そのものにおいては引用も認められるものの、思想的意味においてはほぼ否定されている。


【全体図】
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海の怪物を退治する騎士ルッジェーロ。本作は、15世紀後半から16世紀前半期(ルネサンス期)に活躍した、同時代のイタリアを代表する詩人ルドヴィーコ・アリオストの傑作叙事詩≪怒れるオルランド(狂えるオルランド)≫の一場面に典拠を得て制作された作品である。



【海の怪物を退治するルッジェーロ】
生贄として怪物へ捧げられるアンジェリカ。本作では海の怪物の生贄として鎖で岸壁に繋がれるキタイの姫君アンジェリカを、彼女に激しい恋心を抱いていた主人公のひとり遊歴騎士ルッジェーロが怪物を退治し、救い出すという場面が描かれている。



【怪物へ捧げられるアンジェリカ】
長槍で突かれもがき苦しむ怪物の姿。本作に示される古代の彫刻のように理想化されたアンジェリカの美しく均整的な姿態や、主対象を重点的に照らす演劇的な光源処理、極めて写実的ながらどこか人工的な造形を感じさせる描写などには、新古典主義の典型的様式に基づきながら、他の追随を許さないアングル独自の個性を感じることができる。



【長槍で突かれもがき苦しむ怪物の姿】

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