2010/01/26掲載
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ドーソンヴィル伯爵夫人の肖像(Comtesse d'Haussonville) 1845年 131.8×92cm | 油彩・画布 | フリック・コレクション
魅惑的な表情を浮かべるドーソンヴィル伯爵夫人。伯爵夫人の顎のあたりに軽く添えるような左手の仕草は、2度のイタリア滞在中で熱心に研究していた古代ローマの彫刻に倣った≪瞑想≫を意味するものであり、ドーソンヴィル伯爵夫人の知性と教養の高さを示している。
【魅惑的な表情を浮かべる伯爵夫人】
異なる両腕の長さ。伯爵夫人の左肩から背にかけての急激な湾曲は人体の骨格構造的には有り得ないものであり、また両腕の長さも画面奥側の右腕が極端に長く描かれている。しかし画面全体としては人体の不自然さを全く感じることは無く、むしろ湾曲は伯爵夫人の女性らしさを、左右の腕は全身姿態の絶妙な均衡を保たせる効果を発揮している。
【異なる両腕の長さ】
背後の鏡台に映る伯爵夫人の後頭部。極めて高度で卓越した技術を用いた細部への徹底的で妥協なき取り組みによる写実的描写や、美しきドーソンヴィル伯爵夫人の魅力的な顔立ちや表情なども特筆に値する出来栄えである。
【鏡台に映る伯爵夫人の後頭部】 |