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エジプトへの逃避途上の休息
(Die Ruhe auf der Flucht nach Agypten) 1510年
58.2×39.2cm | Oil on panel | Staatliche Museen, Berlin |
写本彩色画家の父から写実的で細密描写を基本とした画法を学んだアルトドルファーの別の一面を垣間見れる初期の代表的な作品『エジプトへの逃避途上の休息』。アルトドルファーの写実性をもった表現を用いながらも、建築物や噴水などのモティーフに幻想的なエッセンスを与え、独特の作風となった本作の主題はユダヤの王ヘロデが、幼子キリストを殺害するためにベツレヘムへ派遣した兵士から逃れるためにエジプトへ向かう場面を描いた≪エジプトへの逃避途上≫。ドナウ派の大きな特徴である風景にも、画家の卓越した表現が見られるなど、アルトドルファーを研究する上で、特に重要視される作品のひとつである。繊細に表現される幼子キリストに慈愛の笑みを浮かべる聖母マリアらの傍らには、その父であり夫である聖ヨセフが美しい青色の衣服をまとい見守っている。またこの幻想的な場面を象徴している噴水のモティーフの下には、アルトドルファーの署名と作品の制作年が記されている。
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