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荒野の洗礼者聖ヨハネ (St.John the Baptist) 1490年頃
42×28cm | 油彩・板 | ベルリン国立美術館 |
初期ネーデルランド絵画の画家ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスが晩年期に描いたとされる代表作のひとつ『荒野の洗礼者聖ヨハネ』。制作の意図や経緯は不明であるが、一部の研究者からは画家自身の祈祷用に手がけられたと推測される本作に描かれるのは、神の子イエスを始め多くの人々に洗礼を施した旧約聖書における最後の預言者で、エルサレムの神殿の祭司ザカリアと聖母マリアの従姉妹エリザベトとの間に生まれた息子ヨハネが過ごした荒野での修行場面≪荒野の洗礼者聖ヨハネ≫で、牧歌的な緑々しい荒野でメランコリックに瞑想に耽る洗礼者聖ヨハネの姿が非常に印象的である。独創的な神秘性を含む本作の世界観と、ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス独特の登場人物の温和的な表情、子羊を始めとして様々な動物が配された風景表現など秀逸な出来は、画家の傑出した優れた才能を示すものであり、本作はそれが如何なく発揮され我々が目にすることのできる最良の作例のひとつでもある。
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