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キリストの降誕 (The Nativity) 1480-85年頃
34×25.3cm | 油彩・板 | ロンドン・ナショナル・ギャラリー |
15世紀後半のネーデルランド絵画史で異彩を放つ画家ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスの世界観をよく示す作例のひとつ『キリストの降誕』。本作に描かれる主題は、大天使ガブリエルから聖告を受けた聖母マリアが、人口調査のために訪れたベツレヘムの厩の中で神の子イエスを産み飼葉桶に寝かせる聖なる場面≪キリストの降誕≫で、特徴的な卵型の顔面や強く明確な明暗法の使用などヘールトヘン・トット・シント・ヤンスの大きな特徴が存分に示されている。降誕した幼子イエスがこの(暗中の)場面を照らす表現は、根拠は少ないものの14世紀アイルランドの女子修道院長である聖ブリジッドの記述から用いられた可能性も指摘されており、現在は更なる研究が期待されている。また遠方には羊飼いたちの前に眩い輝きを放つ大天使が現れ、神の子イエスの降誕を告げる場面が神秘的に描かれている。
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