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ヴィラ・バルバロ (Villa Barbaro) 1561年
サイズ不詳 | Fresco | バルバロ家別荘(マゼール) |
弟子とともに描かれたヴェロネーゼの傑作であるバルバロ家別荘の連作壁画作品『ヴィラ・バルバロ』。楽器を持つ女性像や扉を開けて覗き込む人物などを描いた≪十字形の間≫、ローマ神話の酒と豊穣の神バッコスを描いた≪バッコスの間≫、愛や調和の寓意を描く≪夫婦愛の間≫、主神ユピテルをはじめとするオリュンポスの神々を描いた≪オリュンポスの間≫、豊穣や力、嫉妬、時の寓意を意味し、壁画下部に犬を描いた≪犬の間≫、美徳の寓意を描く≪ランプの間≫の六つの間からなる本作は、その圧倒的な完成度の高さから、16世紀ヴェネツィア派絵画史にとっても非常に重要視されており、この壁画全体における計算された構図の美しさは勿論、ヴェネツィア派の集大成を思わせる豊かでドラマティックな色彩と人物描写は、現在も色褪せることなく輝き続けている。またバルバロ家別荘ヴィラ・バルバロの作品群の中で最も愛らしい一面を覗かせるこの十字架の間に描かれた少女は特に人気が高い。この壁画全体の解釈は、「平穏な家庭生活をもたらす天の調和」とも、「愛と酒を称揚する異教的観念に基づく寓意的壁画」ともされているが、どちらも決定的な確証は得ていない。なお本作は、弟子の手によって仕上げられた部分も確認されている。本項で取り上げている≪バッコス≫は本来トラキアやマケドニアの集団的狂乱と陶酔を伴う秘儀における神であったが、オルフェウス秘儀との接触により、冥界とのつながりをもつに至り、ヘレニズム期以降彼自身の秘教が大流行した。
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