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キューピッドによって結ばれるマルスとヴィーナス
(Marte e Venere legati da Amore) 1580年頃
206×161cm | 油彩・画布 | メトロポリタン美術館 |
ヴェネツィア派の画家ヴェロネーゼ晩年を代表する神話画の傑作『キューピッドによって結ばれるマルスとヴィーナス』。絶大な権力を誇るハプスブルグ家の皇帝の中で最も有名な人物のひとりであるルドルフII世の美術コレクションために制作されたとされる本作には、ローマ神話≪マルスとヴィーナス≫に典拠を得て、主神ユピテルと正妻ユノの息子でギリシア神話におけるアレスと同一視される軍神マルスが、有翼の愛の神キューピッド(ギリシア神話におけるエロス)によって愛と美の女神ヴィーナスと結ばれる場面が描かれているとされるが、その解釈は諸説存在し、現在も研究が進められている。本作を支配する独特のメランコリックな雰囲気はヴェロネーゼ晩年の大きな特徴であると共に、本作に描かれる愛と美の女神ヴィーナスやキューピッドたちの輝くような滑らかな肌の質感や軍神マルスの逞しい肉体美などに示される人間の官能性は、依頼主とされるルドルフII世が特に好んだ趣向であることが知られている。
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