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楽園のアダムとイブ
(Adam und Eva im Paradies) 1615年頃
74×114cm | 油彩・板 | マウリッツハイス美術館(ハーグ) |
17世紀初頭のフランドル絵画の巨匠ヤン・ブリューゲルと大画家ピーテル・パウル・ルーベンスによる共作の中で最も傑出した作品のひとつ『楽園のアダムとイブ』。ルーベンスが人物を、ヤン・ブリューゲルが得意としてた動物を描いた本作に描かれるのは、旧約聖書の創世記第2章から第3章に記される、父なる神によって創造された最初の人間アダムと、アダムの肋骨から生まれた最初の女性イブ(エヴァ)が、神の庇護の下、中央に命の木と善悪の知識の木が茂るエデンの園で様々な動物らと暮らす中、神より口にすることを禁じられていた善悪の知識の実を、蛇に「神のようになれる」と唆され、イブ(エヴァ)が取ってしまう場面≪蛇に唆され善悪の知識の実を取るイブ(エヴァ)≫で、ルーベンスによる質量感に溢れたアダムとイブの表現と、牧歌的なエデンの園で戯れるヤン・ブリューゲルが描いた動物らの表現は、非常に高度で類稀な融合性を示している。特に細密描写によって描かれる画面右端で戯れ合う二匹の虎などの自然主義的な運動性や、孔雀や鸚鵡を始めとした様々な鳥の豊潤で明瞭な色彩は、観る者の目を奪うばかりであり、ヤン・ブリューゲルの高い表現力が表れた良例のひとつとも言える。
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