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瀕死のクレオパトラ(クレオパトラの自殺) 1658年
(La morte di Cleopatra (Selbstmord der Kleopatra))
153×168.5cm | 油彩・画布 | ウィーン美術史美術館 |
17世紀の画家グイド・カニャッチ随一の傑作『瀕死のクレオパトラ(クレオパトラの自殺)』。画家が皇帝レオポルト1世の招きで訪れたウィーン滞在の頃(又はヴェネツィア時代末期)に手がけられたと推測される本作に描かれるのは、アクティウムの海戦でローマ軍に敗北し、同軍に屈することを拒んだ古代エジプトのプトレマイオス朝最後の女王クレオパトラが、毒蛇(コブラ)に自身の身体の一部(乳房)を噛ませ自害したと伝えられる逸話≪瀕死のクレオパトラ(クレオパトラの自殺)≫で、画家後期を代表するモティーフである半裸婦像を描いた最も著名な作品としても知られている。右腕に毒蛇が噛み付かせ、玉座に鎮座するクレオパトラは毒によって身体の力が抜けたような様は、観る者に死の予感を抱かさせずにはいられない。またクレオパトラの周囲には女中らが女王の自害に驚きを悲しみの仕草をみせている。本作の深い陰影による劇的で写実的な場面表現はカラヴァッジェスキ派からの、柔らかい光の表現は巨匠コレッジョからの、豊かな色彩はヴェネツィア派の影響を感じさせるも、画面全体を包み込んでいる静謐な雰囲気や官能性に溢れた半裸身の表現に様々な時代で得た様式美の融合を感じさせる。なお本作は皇帝レオポルト1世の叔父レオポルト・ヴィルヘルム大公のコレクションのひとつであるが、ミラノのブレラ美術館にも同主題の作品が所蔵されている。
関連:ブレラ美術館版 『瀕死のクレオパトラ』
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