■ |
キリストとサマリアの女
(Cristo y la samaritana) 1650-1652年頃
166×205cm | 油彩・画布 | 王立サン・フェルナンド美術学校 |
17世紀スペインの画家アロンソ・カーノ後期の代表作『キリストとサマリアの女』。旧約・新約聖書から八場面の逸話を描いた連作のひとつである本作はヨハネ福音書4:1-30に記される、ユダヤの民と敵対していたサマリアのシカル町の井戸でイエスは疲れを癒す為に水汲みの女に水を求めると、サマリアの水汲み女は敵対する者から声をかけられたことに驚き戸惑うも、イエスとの会話で女の過去を指摘したことなどで、次第にイエスを信じ始め、「救世主が来ると聞いている」と問うと、「それはあなたと語っている私だ」とイエスが答えたとされる逸話≪キリストとサマリアの女≫で、イタリア絵画の柔質的な描写と、闊達な筆使い、深みのある豊かで自在な色彩は、画家後期の作品の中でも、特に優れたものとして知られている。なお、この連作群は1810年の独立戦争時のフランス軍侵攻による美術品略取で、スペインから持ち去られ、本作『キリストとサマリアの女』と、スコットランドのポロック・ハウス(スターリング・マクスウェル・コレクション)が所蔵する『アダムとイブ』以外は、現在も行方が知れない。
|