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洗礼者聖ヨハネの斬首 (Decollazione del Battista) 1608年
361×520cm | 油彩・画布 | サン・ジョヴァンニ聖堂(マルタ島) |
カラヴァッジョ最大の傑作『洗礼者聖ヨハネの斬首』。殺人を犯しローマから逃亡したカラヴァッジョが逃亡先のマルタ共和国で画家としてのカラヴァッジョの名声の高さから騎士団長の肖像画を描き、騎士に任命された直後に団長より『執筆する聖ヒエロニムス』と共に依頼されサン・ジョヴァンニ大聖堂付属祈祷所のために制作した本作は、神の子イエスに洗礼を施した洗礼者であり、旧約聖書における最後の予言者でもある≪洗礼者聖ヨハネ≫がユダヤの民を惑わしたとの罪で投獄される中、ヘロデ王の娘サロメが王の前で踊りその褒美として洗礼者聖ヨハネの首を求めたことから、聖ヨハネが斬首される場面≪洗礼者聖ヨハネの斬首≫を描いたもので、晩年期の作品の大きな特徴である和らいだ色調の中へ随所にハイライトを用いる光彩の表現や人物の大部分を左へ配することによって緊張感に満たされた絶妙な空間構成のほか、聖書の一場面に16世紀当時の牢獄を描くなど、至る所にカラヴァッジョの画家としての偉才が示されている。また他の作品とは異なる本作の特異点として、斬首される洗礼者聖ヨハネの首からの流血で「F・ミケランジェロ」と画家の本名が記されている(Fは「騎士」又は「同胞」、「描く」を意味しているとされている)。なお作品完成から数ヶ月後、マルタ共和国で再び殺人を犯し逃亡するもまもなく逮捕され、本作の前で画家自身が斬首刑を言い渡された実話も残されている。
関連:大聖堂付属美術館版『執筆する聖ヒエロニムス』
(※現在はサン・ジョヴァンニ大聖堂付属美術館が所蔵)
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