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女占い師(ジプシー女) (Buona ventura (La zingara))
1596年頃 | 89×131cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館 |
カラヴァッジョ初期における最大の傑作のひとつ『女占い師(ジプシー女)』。本作の後に描かれる『トランプ詐欺師』と同様カラヴァッジョ作品で数点確認されている風俗画に属する本作は、カラヴァッジョの自然主義的表現が画業の初期から非常に明確に示された代表的な作例のひとつであり、身なりのよい服装と刀剣を纏った若い男が女占い師に右手を差し出し未来を占っている、極めて現実的な主題を以って描かれている。当時、古代を含む過去の偉大な画家たちが残した宗教画や歴史画が絵画の絶対的な高位であり、それらの主題が絵画において中心的な存在だったことに対し、カラヴァッジョは自らの眼で見る現実の世界を唯一の手本とし、それらを表現することが最も崇高であると考えていた。この考えから、後に生み出された(画家が残した数々の)作品は一部から熱狂的な支持を得るも、殆どの知識人は拒絶されたが、このカラヴァッジョによって描かれた自然主義的表現を用いる作品は、イタリアのみならずスペインやフランドルを中心とした諸外国で幾多の巨匠たちに影響を与えている。なおカラヴァッジョ自身による本作のヴァリアント(又は他者による模作)がローマのカピトリーノ美術館に所蔵されている。
関連:カピトリーノ美術館版『女占い師』
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