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ロレートの聖母(巡礼者の聖母)
Madonna di Loreto (Madonna dei pellegrini) 1604年頃
260×150cm | 油彩・画布 | サンタゴスティーノ聖堂(ローマ) |
傑作『ロレートの聖母(巡礼者の聖母)』。カラヴァッジョの自然主義的写実性と深い感情表現が見事に示される本作は、ロレートの町の聖なる家とそこに住まう聖母子を描くよう依頼された祭壇画であるが、本作においてその主題は微かに暗示されるだけの表現で留めてられており、カラヴァッジョは徹底して庶民的な母子と巡礼者の姿を描いている。本来の聖母子像とはかけ離れた簡素な光輪によって示される聖母子の姿は、それによって非常に慎ましやかな雰囲気が画面全体に溢れ、当時批難の的となった巡礼者の綻んだ頭巾や、見る者の方に向けられた泥に塗れる足裏は、質素でありながら豊かな聖性が感じられる。また本作で描かれる聖母マリアは、33歳のカラヴァッジョが当時の公証人パスクアローネを襲撃し、大怪我を負わせる原因となった娼婦マッダレーナ・アトニエッティがモデルとされている。
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