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皇帝テオドシウスの教会進入を拒む聖アンブロシウス
(The Emperor Theodosius is forbidden by St.Ambrose to enter Cathedral) | 1618-19年頃 | 149×113cm | 油彩・画布
ロンドン・ナショナル・ギャラリー |
ヴァン・ダイク初期の代表的な宗教画作品のひとつ『皇帝テオドシウスの教会進入を拒む聖アンブロシウス』。本作は皇帝テオドシウスがテッサロニーキで暴動暴徒の大虐殺を命じたため、ミラノの大司教聖アンブロシウスが罪を償い悔い改めるまで教会へ入ることを禁じた≪皇帝テオドシウスの教会進入を拒む聖アンブロシウス≫を主題に、師ルーベンスの構想を基にヴァン・ダイクが大部分を手がけ、最後にルーベンスが仕上げたルーベンスとの共作版のヴァリアント(第二ヴァージョン)として制作された作品で画面全てがヴァン・ダイクの手によるものとされる。類稀な早熟を示し師ルーベンスからの独立を得るために、オリジナルから幾つかの個所で野心的な変更がなされている。本作では背景の教会がより重厚的に描かれ威圧感を思わせるほか、主対象となる登場人物以外をやや不鮮明に描写することによって、聖アンブロシウスと皇帝テオドシウスを画面内で鮮明に浮き立たせている。また髪や髭などの各人物の身体的特徴や服装、小道具などが若干変更されている。なお本作の主題≪皇帝テオドシウスの教会進入を拒む聖アンブロシウス≫は、父なる神の住まう教会の神聖な権威が、皇帝の世俗的な権威や権限に勝利したことを示している。
関連:ルーベンスとの共作版(ウィーン美術史美術館所蔵)
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