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マントを分け与える聖マルティヌス
(St.Martin Dividing His Cloak) 1618-20年頃
170×160cm | 油彩・画布 | 聖マルティヌス教会 |
稀代の早熟を示す画家ヴァン・ダイク初期の代表的な宗教画作品のひとつ『マントを分け与える聖マルティヌス』。1612年頃に手がけられた油彩スケッチが残されるよう、本来はヴァン・ダイクの師ルーベンスが祭壇画として制作する予定であったが、何らかの理由でヴァン・ダイクの手に委ねられたと推測される本作に描かれるのは、4世紀に活躍したコンスタンティヌス大帝が統治するハンガリー出身の聖人マルティヌスが、ローマ軍兵士として従軍していたときに教会へ向かう途中、裸で寒さに耐える乞食を目撃し、自身の纏う外套(マント)を引き裂き分け与えた逸話≪マントを分け与える聖マルティヌス≫の場面である。師ルーベンスの影響を強く感じさせる、本作の乞食や聖人マルティヌスが乗る馬などの大胆な構図と運動性と躍動感に富んだ描写は、ルーベンスが若きヴァン・ダイクの早熟な画才を認め、自身に依頼される重要な仕事をヴァン・ダイク任せたことを示している。なお女性や子供などを登場人物を数名追加するほか、聖マルティヌスの握る剣の位置を若干下部へ変更した、本作よりふた周りほど大きいヴァリアントが1620年頃に制作されており、現在ウィンザー城王室コレクションに所蔵されている。
関連:ウィンザー城王室コレクション所蔵作品
関連:ルーベンス作『マントを分け与える聖マルティヌス』
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