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十字架を担うキリスト (Christ Bearing the Cross)1617年頃
211×162cm | 油彩・画布 | シント・パウルス聖堂 |
類稀な才能を示すヴァン・ダイクの最も初期の代表的な宗教画作品のひとつ『十字架を担うキリスト』。偉大なる同胞の画家であり師でもあったルーベンスやヨルダーンスら当時の著名な画家たちが制作に携わったシント・パウルス聖堂のための連作≪バラ冠の奇蹟≫15点のひとつとして若きヴァン・ダイクが手がけた本作に描かれるのは、弟子ユダの裏切りによって逮捕された受難者イエスに下された磔刑を執行する為に、己の身を掲げられる十字架を背負い処刑所であるゴルゴタの丘への道を進む≪十字架を担うキリスト≫の場面で、十字架を運ぶ受難者イエスの苦痛に歪む表情や傍らで見守る聖母マリアの悲壮感が漂う表情などに示される激しい感情表現と、受難者イエスを嘲笑し暴行を加えるローマ兵士やユダヤ人たちの興奮的な運動性が見事に画面の中に示されている。また、制作当時、まだ聖ルカ画家組合に入っていなかったヴァン・ダイクにとって(翌年1618年に組合へ入った)、この大仕事に携わったことは非常に重要な出来事かつ若きヴァン・ダイクが同業者の中で確固たる地位を得ていたことを示しており、報酬もルーベンスやヨルダーンスと同額(150ギルダー)を受け取ったと記録が残っている。
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