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聖アウグスティヌスの幻視 (St.Augustine in Ecstasy)
1628年 | 390×225cm | 油彩・画布 | アウグスティヌス会聖堂
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17世紀フランドルを代表する画家ヴァン・ダイクの傑作的宗教画作品のひとつ『聖アウグスティヌスの幻視』。アントウェルペンの聖アウグスティヌス会聖堂のために制作された本作は、ラテン教会四大博士のひとりで、ヌミディアのタガステに生まれた(ヒッポの)聖アウグスティヌスが、聖三位一体論の執筆するさなかにおこなった海浜の散策中、幼児が貝殻で砂浜を掘り海水を汲み上げる姿を目撃し、それが無駄な努力であることを幼児に諭したところ、自身の責務であった聖三位一体論の神秘解明が不可能であることに気付き戒められた体験を、幻視体験として表現した≪聖アウグスティヌスの幻視≫を主題に描かれた作品である。画面上部には天上から降臨する聖三位一体を示す父なる神を、画面下部には中央に幻視体験をする聖アウグスティヌス、その左部に聖アウグスティヌスの母で敬虔な聖女でもある聖モニカ、右部にはおそらくは聖ニコラウスであろう僧侶が配されている本作には、ヴァン・ダイクが自身の様式確立に多大な影響を受けたルネサンス期からバロック期までのイタリア絵画に対する深い考察が示されている。
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