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狩猟場の王(狩猟場のチャールズ1世の肖像)
(Roi à la Chasse) 1635年頃
272×212cm | 油彩・画布 | ルーヴル美術館(パリ) |
ルーベンス以降の17世紀フランドル絵画で世界的に最も名を馳せた画家のひとりヴァン・ダイクの描いた肖像画の最高傑作『狩猟場のチャールズ1世の肖像』。1775年にデュ・バリー夫人から購入され現在のルーヴル美術館に所蔵された、通称『狩猟場の王』と呼ばれる本作は1632年から宮廷画家として仕えた当時の英国王チャールズ1世の狩猟姿を描いた肖像画で、今日までに言われる肖像画家としてのヴァン・ダイクの名声を決定付けた画家随一の代表的な作品とされる。狩猟場に悠然と立ち振る舞うチャールズ1世は国王としての偉大なる威厳と尊格に満ちており、本作を見る全ての者を圧倒する。しかしそれまでの英国王族を扱う肖像画の窮屈で形式ばった堅苦しさは影を潜め、品位を感じさせる高度な色彩表現と、性格をも描ききる人間味溢れる人物描写によって肖像画の新たな一面を示すなど非常に豊かな表現を用いている。また画面右部の風に揺らめく巨木の葉に見られる自由闊達に動く筆跡や大気感を感じさせる遠景の表現など細部にわたり画家の優れた力量が示されている。本作に代表されるヴァン・ダイクが手がけた肖像画は、その後の英国の肖像画の基礎となっているほか、同国のアカデミズムにも多大な影響を与えたことが知られている。
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