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スキピオの自制 (The Continence of Scipio) 1620-21年頃
149×113cm | 油彩・画布 | クライスト・チャーチ図書館 |
17世紀フランドル絵画史の巨匠アンソニー・ヴァン・ダイクの代表的な歴史画のひとつ『スキピオの自制』。バッキンガム公の依頼によって制作された、イギリス滞在期で最も初期の作品となる本作に描かれるのは、紀元前ローマの歴史家リヴィウス著「ローマ建国史」や14世紀イタリアの詩人ペトラルカ著「アフリカ」に記された、古代ローマの名門貴族でイタリアの英雄としても知られる軍人スキピオ・アフリカヌスの清廉・美徳の物語≪スキピオの自制≫で、当時、ヴァン・ダイクの作品に示される師ルーベンスからの影響力以外に、ルネサンス期ヴェネツィア派の巨人ヴェロネーゼからの強い影響が指摘されている。十代の頃に一度大敗を喫していた名将ハンニバル・バルカ率いるカルタゴ軍との戦いに勝利しカルタゴを征服したスキピオ・アフリカヌスは、戦勝の賠償と祝いのため美しい女性の捕虜を提供されるも、その女性に婚約がいることを知りそのまま婚約者へと返したとされ、英雄スキピオ・アフリカヌスの物語画としてはこの≪スキピオの自制≫が最も一般的で好まれた題材であった。
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