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平和のアレゴリーを描くルーベンス
(Rubens who draw Allegory of peace) 1660年頃
337×141cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
後期バロックの巨匠ルカ・ジョルダーノが手がけた大作『平和のアレゴリーを描くルーベンス』。制作の意図や目的は不明であるが、エンセナーダ侯爵の蒐集品の中からスペイン国王カルロス三世が購入し、プラド美術館に所蔵されることになった本作は、王の画家にして画家の王と呼ばれたフランドル出身の大画家ピーテル・パウル・ルーベンスが、平和の寓意の絵画を描く姿を描いた作品である。しかしルカ・ジョルダーノは単に画家としてのルーベンスを描くに留まらず、優秀な外交官としての、また高貴な騎士としての姿を、女神の姿をした様々な寓意像などを配しながら本作に表現している。画面左部分に配された自らが手がける作品の前のルーベンスは、ウィンザー城王室コレクションのルーベンスの自画像と同様の面持ちで、サンティアゴ騎士団の象徴であるホタテ貝を身に着けこちらを見つめている。腰の下では不和の象徴がもがき苦しんでおり、その上にルーベンスが座することで平和の使者としての外交官の立場を表現している。ルーベンスの背後には(おそらく豊穣を意味する)女神ユノを配し、階段の下には現世の世俗的な富や名声の空虚を象徴する様々なヴァニタス(ラテン語で空虚を意味する)が描かれている。また本作中でルーベンスが描く絵画の内容と同様に、画面右部分では平和の寓意像が軍神マルスや戦争の象徴を退けている姿が劇的な描写で表現されるほか、中空には知恵と芸術を司る最高女神ミネルヴァと美食と豊穣の女神ケレスがルーベンスを祝福するかのように舞っている。ルカ・ジョルダーノは1660年代初頭、ルーベンスに強い関心を示していたことが研究によって判明しており、制作年代はそこから推測されている。
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