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川べりの農村(レイデンのモティーフのある風景) 1636年
(Village at the River (Landschaft mit Motiv aus Leiden))
39.5×60cm | 油彩・板 | アルテ・ピナコテーク |
17世紀オランダ絵画黄金期における写実性を含む風景画の先駆的画家ヤン・ファン・ホイエンを代表する作品『川べりの農村(レイデンのモティーフのある風景)』。依頼者など制作の意図や目的は不明であるが、ヴェルツブルク大司教美術館が旧蔵し、アルテ・ピナコテークへと移管された本作に描かれるのは、画家が1630年代以降にしばしばモティーフとして取り上げた水辺(本作では川べり)と、その近くの農民・農家で、抑的な色彩・色調による透明感が漂う大気的情景の表現と、その中で営まれる農民たちの労働の姿の描写は秀逸の出来栄えである。このようにファン・ホイエン独特の風景画様式の特徴をよく示す本作の中で、最も特筆すべき点は、現実的でありながら穏やかで情感豊かな雰囲気による調和的な画面の構成と表現の質にある。画家の独自性を感じさせる、銀灰的な色を用いて画面全体を包み、その彩度を抑えることによって得られた、この調和的な効果は、本作の独特の雰囲気を作り出す最大の要因のひとつである。また川の水面とそこに反射する農村の風景、農民たちが生活する土地(大地)、上空に漂う巨大な白雲、これらの風景的要素を絶妙に統合させ、画面の中で展開させる表現の質の高さは、この頃手がけられた画家の作品の中でも白眉である。
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