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鍍金した酒杯のある静物(Still-life with Gilt Goblet)1635年
88×113cm | 油彩・板 | アムステルダム国立美術館 |
17世紀オランダ絵画黄金期におけるモノクローム・バンケッチェ(モノクローム風の晩餐図)の最大の画家のひとりヘダ・ウィレム・クラース1630年代を代表する作品『鍍金した酒杯のある静物』。本作に描かれるのは、机に敷かれた白地の布(ナプキン)の上に置かれるワインが入るグラス、倒れるグラス、水差し、銀・鍍金器、皮が剥かれたレモン、食べかけのパン、牡蠣の殻、ナイフなどの静物を描いた典型的なモノクローム・バンケッチェで、ヘダの大きな特徴である極めて高度な技術による、非常に緻密な写実的描写は本作最大の見所である。特に銀・鍍金器やガラスのグラスの表面に反射する光と物体の表現は白眉の出来栄えを示しており、この頃の作品群の中でも最も素晴らしい表現のひとつとして多くの研究者が認めている。また画面左上から射し込む光は個々の静物は勿論、画面全体に絶妙な緊張感を生み出すことに成功しており、本作に静物画とは思えないほどの劇性や迫真性、真実性を付加し、それらが一体となって観る者に迫るのである。
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