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Introduction of an artist(アーティスト紹介)

ヘダ・ウィレム・クラース Willem Claesz. Heda
1594-1680 | オランダ | オランダ絵画黄金期・静物画

17世紀オランダ絵画黄金期において流行したモノクローム・バンケッチェ(モノクローム風の晩餐図)の画家。非常に細密で写実的な描写を得意とし、宗教画や肖像画も手がけるが、モノクローム・バンケッチェやヴァニタス画を始めとした静物画を数多く制作、同時代の静物画家フロリス・クラース・ファン・ダイクと共に1620年代後半から1640年代にかけて一世を風靡したモノクローム・バンケッチの名手として名を馳せる。1620年代の作品は机上にグラスや水差し、食器やそこに盛り付けられる食材など静物画の典型的なモティーフが中心であったが、1630年代からはハム、蟹などの海産物、食べかけのパイなどヘダを代表するモティーフによる静物画を次々と手がけるようになる。1680年に死去。享年86歳。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
【全体図】
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銀の食器とパイのある静物 (Banquet Piece) 1633年
58.6×79.3cm | 油彩・画布 | フランス・ハルス美術館

17世紀オランダ絵画黄金期の静物画家ヘダ・ウィレム・クラースによるモノクローム・バンケッチェ作品のひとつ『銀の食器とパイのある静物』。画家の主要なモティーフの新たな多様性が示される1630年代前半期に手がけられた本作は、ブラックチェリーを包んだ食べかけのパイや、ヘダお馴染みの銀食器やグラス、白地のナプキン、皮を剥いたレモンなどを描いたモノクローム風の静物画(晩餐図)で、緑暖色的な色彩による統一感と写実描写によって表現される本作は、ある種、抑止的であり、ひとつの美としてこの晩餐図を捉えたときに、極めて高い効果を生み出していることに気付かされる。画面の40%を占める背景にかかる光彩加減と、各静物に反射する緻密な光沢の表現は、見事なまでに対称的美的感覚を観る者に訴えるものの、全体像としては見事な調和性と独特な協調性に満ちている。また細部に注目してみると、パイの質感を感じさせる濃密な描写を始め、銀食器に映り込む各静物の卓越した表現、上質な光沢感のある白地のナプキンの柔らかい質感表現、瑞々しいレモンの切り口など本作には画家の類稀な画力が存分に発揮されている。

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【全体図】
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鍍金した酒杯のある静物(Still-life with Gilt Goblet)1635年
88×113cm | 油彩・板 | アムステルダム国立美術館

17世紀オランダ絵画黄金期におけるモノクローム・バンケッチェ(モノクローム風の晩餐図)の最大の画家のひとりヘダ・ウィレム・クラース1630年代を代表する作品『鍍金した酒杯のある静物』。本作に描かれるのは、机に敷かれた白地の布(ナプキン)の上に置かれるワインが入るグラス、倒れるグラス、水差し、銀・鍍金器、皮が剥かれたレモン、食べかけのパン、牡蠣の殻、ナイフなどの静物を描いた典型的なモノクローム・バンケッチェで、ヘダの大きな特徴である極めて高度な技術による、非常に緻密な写実的描写は本作最大の見所である。特に銀・鍍金器やガラスのグラスの表面に反射する光と物体の表現は白眉の出来栄えを示しており、この頃の作品群の中でも最も素晴らしい表現のひとつとして多くの研究者が認めている。また画面左上から射し込む光は個々の静物は勿論、画面全体に絶妙な緊張感を生み出すことに成功しており、本作に静物画とは思えないほどの劇性や迫真性、真実性を付加し、それらが一体となって観る者に迫るのである。

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【全体図】
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蟹のある朝食 (Breakfast with Crab) 1648年
118×118cm | 油彩・画布 | エルミタージュ美術館

17世紀オランダ絵画黄金期の静物画家ヘダ・ウィレム・クラースの1640年代を代表する傑作『蟹のある朝食』。画家の名を一躍有名にした当時ネーデルランドで流行したモノクローム風の晩餐図(モノクローム・バンケッチェ)の一例である本作に描かれるのは、画家1640年代の代表的なモティーフのひとつである≪蟹≫がテーブル上に置かれた朝食図である。独特の緊張感と迫真性が表れた画面の中で静物に射し込む光と陰影の表現や、細部まで緻密に描写される蟹、パン、皮が剥かれたレモン、オリーブ、銀皿、金脚の杯、水差し、ガラスのグラス、テーブルに敷かれた皺のよるテーブルクロスなど各静物の高度な写実性は、ヘダ・ウィレム・クラース様式の特徴をよく示している。本作の中で最も印象的なのは、豪華な朝の食卓に相応しい甲殻類(蟹)の自然的硬質性と、テーブルクロスの自然的柔軟性の存在感や対比にある。蟹の硬質感は自然的であるため、机上で布との一体感を生み出しており、それによって金脚の杯・水差し・グラスなど金属、又は鉱物的な硬質感が一層引き立つのである。

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