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無原罪の御宿り -アランフェス-
(Immaculate Conception)1670-80年頃
222×118cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
セビーリャ派の巨匠バルトロメ・エステバン・ムリーリョ晩年期を代表する傑作『無原罪の御宿り』。本作に描かれるのは聖母マリア信仰の厚かったスペインで当時圧倒的な人気を博した主題である、神の子イエスを宿す聖器である聖母マリアの誕生も原罪無きものであるとする解釈≪無原罪の御宿り≫で、ムリーリョ独特の柔らかい光彩と筆跡によって表現される人物の輝くような描写が見事に示されている。アランフェスのサン・アントニオ聖堂が旧蔵していたことから「アランフェス」の愛称でも知られる本作の主題≪無原罪の御宿り≫は、最初は東方で唱えられ神学者の間で盛んに議論された後、1854年にようやく公認された複雑な教理で、カトリックと対立していたプロテスタントは本主題での聖母マリアの聖性を否定していたが、当時、最もカトリック信仰の厚かった地域であるスペインでは、運動性と甘美に満ちた表現によって示される聖母マリアの純潔性を描いた作品が非常に人気が高く、そのような表現を得意としていたムリーリョは当時のみならずその後もスペインを代表する画家として史上に長く君臨し続けた。なお画家の作品目録の編集をおこなったアングーロ・イニゲスによって本作の両横部分が切断されたことが指摘してされている。
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