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小鳥のいる聖家族 (Sagrada Familia del pajarito)1650年前
144×188cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
17世紀を代表するセビーリャ派の巨匠ムリーリョによって描かれる聖家族作品のひとつ『小鳥のいる聖家族』。本作の主題は、本作の題名となった小鳥を子犬に見せる幼子イエスとイエスを抱く義父聖ヨセフ、傍らで幼子イエスの愛らしい仕草を見つめる聖母マリアを配した≪聖家族≫であるが、ムリーリョの柔らかく繊細な描写を用いた自然主義的な表現が示されている。幼子イエスは無邪気に小鳥を右手に捕まえ、従順の象徴として知られる子犬に見せる仕草を取っている。その後方にはやや若々しさの残る義父聖ヨセフが幼子イエスを守るかのように腕の中へ抱き、画面左部分では繭から糸を紡ぐ聖母マリアが慈愛に満ちた笑みを浮かべ見守っている。この至極幸せであたたかみを感じる聖なる家族を光と色彩に包まれた描写と、統一と聖性を感じさせる慎ましく安定的な空間構成によって、非常に豊かなムリーリョ独自の世界観が表現されているのである。また画家の愛好家として知られるフェリペ5世の王妃イザベル・デ・ファルネシオが購入し、独立戦争時は一時的にパリのオルレアン宮へ持ち出されるも、その後スペインへ返還され、画家を代表する作品としてプラド美術館に所蔵されることとなった。
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