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ヴァニタス(虚栄のアレゴリー) (Vanitas) 1635-1636年頃
140×174cm | 油彩・画布 | ウィーン美術史美術館 |
主にマドリッドで活躍したバリャドリード出身の画家アントニオ・デ・ペレーダが手がけたヴァニタス画の代表作『ヴァニタス(虚栄のアレゴリー)』。本作は画家が宗教画や歴史画と並んで生涯中に数多く手がけてきた、静物の表現に重点を置きながら、現世への厭世感や無常、世俗的な名声や権力、財産などへの虚栄を表現した≪ヴァニタス(ラテン語で虚ろの意)≫画で、画家のヴァニタス画の中でも代表的な作例として知られている。画面左側の机には髑髏(頭蓋骨)・蝋燭・砂時計など人生の時間的な虚しさと逃れられない死の暗示や、武権力の象徴である鉄砲・鎧などの武具、知識の虚栄を象徴する書物などが乗せられているほか、画面中央には画家のヴァニタス画にしばしば登場する天使(有翼人)が描かれ、その手は現世を象徴する地球儀を指差してる。また地球儀の上には当時の支配者であるカール5世の肖像が彫られたカメオが乗せられていることも注目すべき点のひとつである。画面右側の机には金時計・肖像の彫られた金メダル・金銀貨・首飾りや、肖像画など権力者とそれらが持つ富の象徴が乗せられている。また本作の表現手法においてもフランドル派の影響を感じさせる細部の精密な質感の描写や、感受性豊かな画面構成など、画家の様式的特徴が優れた力量によって見事に示されている。
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