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Introduction of an artist(アーティスト紹介)

アントニオ・デ・ペレーダ Antonio de Pereda
1611-1678 | スペイン | バロック

17世紀スペインのマドリッドで活躍したバリャドリード出身の画家。速筆的な描写による質感表現や細部まで丹念に描き込まれる自然主義的表現、明瞭ながらやや劇的で感受性豊かな光や色彩の表現で、マドリッド派に通ずる様式を確立。ペレーダの画風にはフランドル派の精密な描写やヴェネツィア派の優雅で濃密な表現からの影響が見られるほか、晩年にはダイナミックな展開による盛期バロック様式を取り入れたことが知られている。1611年、バリャドリードで無名の画家であった父と貴族の血を引く母の間に生まれ、1622年、父の死をきっかけにマドリッドへ移ったと考えられる。同地でペドロ・デ・ラス・クエバスの工房で絵画の修行をおこない、ラ・トーレ侯爵ファン・バウティスタ・クレシェンツィを始めとした宮廷貴族らの庇護を受けパトロンを獲得し、1634年には巨匠ベラスケススルバランらも参加したブエン・レティーロ宮≪諸王国の広間≫の装飾で、画家前半生の代表作『サンタ・クルス侯爵によって奪還されるジェノヴァ(ジェノヴァ救授)』を制作。以後、教会や修道院のための宗教画などを手がけるほか、画家が制作する静物画の中に現世への訓戒的な寓意を込めたヴァニタス画は、同時代の代表的なヴァニタス画の作例である。


Work figure (作品図)
Description of a work (作品の解説)
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サンタ・クルス侯爵によって奪還されるジェノヴァ
(Socorro a Génova del marqués de Santa Cruz)
1634年 | 290×370cm | 油彩・画布 | プラド美術館

17世紀マドリッドで活躍した画家アントニオ・デ・ペレーダ前半生の代表作『サンタ・クルス侯爵によって奪還されるジェノヴァ(ジェノヴァ救授)』。本作はオリバーレス公伯爵からの依頼によってブエン・レティーロ宮≪諸王国の広間≫の装飾画として、巨匠ベラスケスや大画家スルバランら当時活躍していた画家が参加し制作された歴史画作品群のひとつで、1625年、リシュリュー枢機卿の支援を受けるサヴォイア公の軍隊に奪取された、スペインと同盟を結んでいたジェノヴァ共和国を、サンタ・クルス侯爵アルバロ・デ・バサーンが軍隊を率いジェノヴァを解放した時事≪ジェノヴァ救授≫を画題に描かれている。熱狂的に民衆から歓声を集める大規模なスペイン軍艦隊と共に、画面中央でジェノヴァ総領の謝辞を受ける甲冑に身を包んだサンタ・クルス侯爵アルバロ・デ・バサーンの姿は、侯爵自身がスペインの輝かしい歴史を表現するかのように堂々とした振る舞いで、勇ましさと尊厳に満ちている。本作に示される細部まで丹念に描き込まれる質感の描写や、優雅で濃密な自然主義的な表現に、フランドル派の精密な描写やヴェネツィア派の影響を感じさせる。

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ヴァニタス(虚栄のアレゴリー) (Vanitas) 1635-1636年頃
140×174cm | 油彩・画布 | ウィーン美術史美術館

主にマドリッドで活躍したバリャドリード出身の画家アントニオ・デ・ペレーダが手がけたヴァニタス画の代表作『ヴァニタス(虚栄のアレゴリー)』。本作は画家が宗教画や歴史画と並んで生涯中に数多く手がけてきた、静物の表現に重点を置きながら、現世への厭世感や無常、世俗的な名声や権力、財産などへの虚栄を表現した≪ヴァニタス(ラテン語で虚ろの意)≫画で、画家のヴァニタス画の中でも代表的な作例として知られている。画面左側の机には髑髏(頭蓋骨)・蝋燭・砂時計など人生の時間的な虚しさと逃れられない死の暗示や、武権力の象徴である鉄砲・鎧などの武具、知識の虚栄を象徴する書物などが乗せられているほか、画面中央には画家のヴァニタス画にしばしば登場する天使(有翼人)が描かれ、その手は現世を象徴する地球儀を指差してる。また地球儀の上には当時の支配者であるカール5世の肖像が彫られたカメオが乗せられていることも注目すべき点のひとつである。画面右側の机には金時計・肖像の彫られた金メダル・金銀貨・首飾りや、肖像画など権力者とそれらが持つ富の象徴が乗せられている。また本作の表現手法においてもフランドル派の影響を感じさせる細部の精密な質感の描写や、感受性豊かな画面構成など、画家の様式的特徴が優れた力量によって見事に示されている。

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悲しみの人キリスト (Cristo, Varón de Dolores) 1641年
97×78cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

17世紀スペインの画家アントニオ・デ・ペレーダ作『悲しみの人キリスト(又は苦しみの人キリストと呼ばれる)』。来歴から、おそらく国内の修道院のために制作されたと考えられる本作に描かれるのは、新約聖書には記されないものの、中世以来、人気の高かった、≪茨の冠≫や≪笞打ち≫、≪磔刑に処されるためにゴルゴダの丘へと向かうキリスト≫など、主に受難者としての主イエスを描くイコノグラフ(宗教的図像)のひとつ≪悲しみの人≫で、自然主義的な表現の中に、国際ゴシック様式に通ずる信仰への強い訴心性が含んでいるのが大きな特徴である。この信仰心へ訴えかけるような独特な側面を併せ持つ本作に関して、ナポリ派の始祖的画家フセペ・デ・リベーラや巨人ティツィアーノ、大画家アルブレヒト・デューラーの影響が指摘されているほか、研究者の中にはスペインで活躍した巨匠エル・グレコや、初期ネーデルランド絵画の影響を指摘する者もある。またペレーダ得意の質感に溢れた細密的な自然主義的表現や劇的で感受性豊かな光や色彩の表現は、受難者イエスの肉体的苦痛を明確に示しながらも、人間の罪をイエス自らが償うという深縁な精神性や聖性を強く表すことによって、本主題が持つ独特の静謐性をより一層、強調しているのである。

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聖ヒエロニムス (San Jerónimo) 1643年
105×84cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド)

17世紀スペインのマドリッドで活躍した画家アントニオ・デ・ペレーダの代表的な聖人像作品のひとつ『聖ヒエロニムス』。作品制作の意図や目的は不明であるが、年記が記されている為、画家がクレシェンツィら諸貴族に庇護されながらマドリッドで名声を高めていった頃である1643年に描かれたことが判明している。本作に描かれるのは、ラテン教会四大博士のひとりで、ローマで神道を学んだ後19歳で洗礼を受け、シリアの砂漠で数年間隠修生活をおくり数々の誘惑に打ち勝ったほか、聖パウラを弟子にしウルガタ聖書の翻訳をおこなった聖人≪聖ヒエロニムス≫が最後の審判時に天使がその到来を告げために吹くとされる喇叭(らっぱ)の音を聞いたとされる逸話≪最後の審判を告げるらっぱを聞く聖ヒエロニムス≫で、庇護者クレシェンツィが傾倒していたカラヴァッジョ様式的な強い明暗法による自然主義的描写が大きな特徴であり、聖ヒエロニムスや、聖人のアトリビュートの髑髏、簡素な十字架、書物、そして一部だけ見える奏楽天使のらっぱなどに示される極めて高度な写実描写は画家の優れた才能の表れである。また聖ヒエロニムスの前で、観者に向けて広げられる書物は、ドイツ・ルネサンスの巨人アルブレヒト・デューラーが手がけた版画集≪小受難伝≫より『最後の審判』の場面であることが判明している。なお本主題は、カラヴァッジョ派の作風に強い影響を受けたスペイン出身のナポリ派の巨匠フセペ・デ・リベーラもしばしば描いて(例:聖ヒエロニムスと最後の審判を告げる天使)おり、写実性などの類似点も認められることから、一部の研究者からは、その関連性が指摘されている。

関連:リベーラ作『聖ヒエロニムスと最後の審判を告げる天使』
関連:デューラー版画集 小受難伝より『最後の審判』

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貴紳の夢 (Sueño del caballero) 1660年頃
152×217cm | 油彩・画布 | 王立サン・フェルナンド美術学校

17世紀スペインの画家アントニオ・デ・ペレーダの最も知られている代表作『貴紳の夢』。制作意図や目的、依頼主など作品制作に関する詳細は不明であるも、本作には様々な虚栄の寓意が散りばめられている。具体的には、知識と教養を示す書物、快楽を示す楽器(音楽)、富を示す宝石や金貨、武力を示す武器、偽りを示す仮面、限りある生を示す花瓶の花、死への儚さを示す頭蓋骨、時の流れを示す火の灯った蝋燭と金の時計など様々な寓意物によって表現される、相当の身分を持った肘掛椅子に座り転寝する若い貴族が見る夢の世界が、画面中央から右側にかけて広がっており、これらが混在する机の上には天使によって「AETERNE PUNGIT, CITO VOLAT ET OCCIDIT」と記された旗が掲げられている。特に、王冠や教皇の三重冠、騎士の甲冑、地球儀などは世界の支配の渇望を表す寓意であり、画家が本作に示した虚栄の要素の中でも最も注目に値する。また技巧的要素においても、本作はペレーダ後期の写実的で濃密な描写と盛期バロックの躍動的な表現との融合が強く示されつつある作品として重要視される。なお近年、根拠は乏しいものの本作をフランシスコ・パラシオスの作とする説が提唱されているが、一般的にはこれを支持していない。

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