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聖ヒエロニムス (San Jerónimo) 1643年
105×84cm | 油彩・画布 | プラド美術館(マドリッド) |
17世紀スペインのマドリッドで活躍した画家アントニオ・デ・ペレーダの代表的な聖人像作品のひとつ『聖ヒエロニムス』。作品制作の意図や目的は不明であるが、年記が記されている為、画家がクレシェンツィら諸貴族に庇護されながらマドリッドで名声を高めていった頃である1643年に描かれたことが判明している。本作に描かれるのは、ラテン教会四大博士のひとりで、ローマで神道を学んだ後19歳で洗礼を受け、シリアの砂漠で数年間隠修生活をおくり数々の誘惑に打ち勝ったほか、聖パウラを弟子にしウルガタ聖書の翻訳をおこなった聖人≪聖ヒエロニムス≫が最後の審判時に天使がその到来を告げために吹くとされる喇叭(らっぱ)の音を聞いたとされる逸話≪最後の審判を告げるらっぱを聞く聖ヒエロニムス≫で、庇護者クレシェンツィが傾倒していたカラヴァッジョ様式的な強い明暗法による自然主義的描写が大きな特徴であり、聖ヒエロニムスや、聖人のアトリビュートの髑髏、簡素な十字架、書物、そして一部だけ見える奏楽天使のらっぱなどに示される極めて高度な写実描写は画家の優れた才能の表れである。また聖ヒエロニムスの前で、観者に向けて広げられる書物は、ドイツ・ルネサンスの巨人アルブレヒト・デューラーが手がけた版画集≪小受難伝≫より『最後の審判』の場面であることが判明している。なお本主題は、カラヴァッジョ派の作風に強い影響を受けたスペイン出身のナポリ派の巨匠フセペ・デ・リベーラもしばしば描いて(例:聖ヒエロニムスと最後の審判を告げる天使)おり、写実性などの類似点も認められることから、一部の研究者からは、その関連性が指摘されている。
関連:リベーラ作『聖ヒエロニムスと最後の審判を告げる天使』
関連:デューラー版画集 小受難伝より『最後の審判』
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