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磔刑の準備(十字架に釘打たれたキリスト) 1582年
(Preparativos para la crucifixión)
145×104cm | 油彩・画布 | エルミタージュ美術館 |
フランシスコ・リバルタが手がけた制作年代が判明する最初期の作品『磔刑の準備(十字架に釘打たれたキリスト)』。署名や年記と共に、1581年から画家が移り住んだマドリッドで描かれたことが記されている本作は、自らユダヤの王を名乗り民を惑わせたとして、ユダヤの大司祭カイアファや民衆らが告発し、受難者イエスがゴルゴタの丘で磔刑に処されるという主題≪キリストの磔刑≫から、受難者イエスが自ら丘の頂上まで運んだ十字架に釘で打ち付けられる場面を描いた作品で、同時期にマドリッドで活躍したイタリア人画家ツッカロやティバルディの影響が如実に示されている。本作ではリバルタが始祖的存在となったカラヴァッジョ派的な自然主義的描写はあまり示されず、受難者イエスが十字架へ打ち付けられるという本作の場面を、観る者が客観的に目撃しているような表現で描かれている。このような画家の生涯における様式的差異が明らかに示される、制作年記や制作場所が明確に記された初期作である本作は、画家生涯の様式における(画風などの)変化や発展を研究する上で極めて貴重な作品としても、特に重要視されている。
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